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ID番号 06525
事件名 慰謝料等請求事件
いわゆる事件名 四日市北郵便局事件
争点
事案概要  四日市北郵便局の局長、総務課長等の管理職らが郵政事業の合理化計画に反対している郵政産業労働組合の組合員である同局の職員に対して、さまざまな侮辱的言辞を弄したこと等を理由として国家賠償法に基づいて損害賠償を請求された事例。
参照法条 国家賠償法1条1項
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 1995年5月19日
裁判所名 津地四日市支
裁判形式 判決
事件番号 平成3年 (ワ) 164 
裁判結果 認容
出典 労働判例682号91頁
審級関係 控訴審/06786/名古屋高/平 8. 3.26/平成7年(ネ)503号
評釈論文 藤内和公・岡山大学法学会雑誌46巻1号99~107頁1996年9月
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 以上のとおり、A課長及びB課長ら管理職は、職員の自発的な同意が要件とされている給与振込みの利用について、原告らがこれを利用しない旨明確に意思表示をしているにもかかわらず、原告らに対し、給与振込みをやれと何度も繰り返し求め、できないなら降格ないし退職しろなどと言いつのるなどし、その他、給与振込みをするよう求めて、様々な威圧的、侮辱的な言辞を浴びせかけ、些細なことを非違行為ととらえて始末書を書けと迫り、あるいは児戯に類した言動でもって、給与の金額確認の妨害をするなどの嫌がらせをしていることが認められる。そうすると、原告らが、給与振込みをしない合理的な理由を管理職に対して積極的に説明しようとせず、また、給与振込みが郵政省の重要な事業施策であり、原告らに対し、管理職としてその施策の趣旨を説明し、加入の勧奨をする必要があった(人証略)としても、A課長ら管理職の原告らに対する前記各言動は、右の説明・勧奨の程度を明らかに逸脱した、不当な行為といわねばならない。
 そして、A課長やB課長らが、原告らに対し、降格あるいは退職しろと発言したことについては、仮に、同課長らが、真意で、原告らに対し、それを求めたものではないとしても、管理職の立場にある者の言辞としては(しかも、前記のとおり低俗かつ粗野な口調でもって繰り返しこれを言いつのるなどということは。)、甚だ不穏当であって、これによって原告らが、その人格を傷つけられたと受けとめたとしてもやむを得ないものと認められる。〔中略〕
 以上によれば、A課長及びB課長らを主とする四日市北郵便局の管理職は、その職務を行なうについて、原告らに対し、管理職としての指導・監督上あるべき程度を逸脱した、粗野あるいは低俗な言動をもってする威迫的、侮辱的、挑発的な行為をあえてしたものと認められるところ、これが、原告らが、郵政省の策定する各種重要施策につき協力的でなく、これを推進しようとする管理職に対して、時に反抗しあるいは無視するなどの対応をとったことに由来する点があったとしても、なお、原告らに対して、不当にその人格を傷つけ、精神的苦痛を及ぼしたものといわざるを得ない。