ID番号 | : | 06544 |
事件名 | : | 休職命令無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 富国生命保険(第三回休職命令)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 生命保険会社が、頚肩腕障害の症状のある職員に対して通常勤務に耐えられない状態であり、症状の再燃および増悪の可能性があるとして行った休職命令(第三回休職命令)の効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 休職 / 傷病休職 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 就労請求権・就労妨害禁止 |
裁判年月日 | : | 1995年7月26日 |
裁判所名 | : | 東京地八王子支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成6年 (ワ) 2964 |
裁判結果 | : | 認容,一部棄却 |
出典 | : | 労働判例684号42頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔休職-傷病休職〕 原告に同項(5)の休職事由が存在するか否かが問題となる。この点、被告は、右休職事由は、「本人の帰責事由により業務上必要な資格を失う」場合を一つの例示としているにすぎないから、必ずしも本人の帰責事由を前提としているわけではないと主張する。しかし、「該当業務に従事させることが不適当」か否かを判断する基準として、「本人の帰責事由により業務上必要な資格を失う」ことを代表例として例示しているのであれば、本人の帰責事由のない場合で、該当業務に従事させることが不適当な場合をも、同項(5)の休職事由に含めるのは不自然であり、まさに右判断の基準として「本人の帰責事由」の存在が前提になっていると言えるから、同項(5)の休職事由には本人の帰責事由の存在が要求されると解すべきである。 したがって、仮に、原告に頚肩腕障害の増悪可能性が存在する場合であっても、それは原告の責めに帰すべき事由に起因するものとは言えないから、右症状の増悪可能性の存在をもって、原告に右就業規則第四八条一項(5)の休職事由があるということはできない。〔中略〕 既に認定したとおり、被告が、原告の頚肩腕障害が治癒しておらず、その症状の増悪可能性がないとは言えないことから全日の通常勤務が可能な状態に至ったとは認められないと判断していることからすれば、被告は、原告に同項(1)のいわゆる傷病休職に準ずべきやむを得ない事由があるとして、原告に休職命令を発したものと考えられるところ、同項(1)に加えて、就業規則第三一条一項、第三二条一項(1)、第三三条二項、第三四条及び第三五条によれば、被告においては、職員が業務外及び通勤災害以外の傷病によって欠勤するときは、まず、傷病欠勤の扱いをし、傷病欠勤の期間内に治癒しないときにはじめて傷病休職を命ずるものとされていると認められること(〈証拠略〉)、既に認定したとおり、休職命令は休職中の被用者に退職金の額、退職年金の受給資格、受給期間、定期昇給等につき具体的な不利益を与えるものであることを併せ考えると、傷病休職に準ずべきやむを得ない事由があるか否かは厳格に解釈すべきであり、本件においても、原告の頚肩腕障害が治癒しておらず、症状の増悪可能性がないとは言えないとしても、それが同項(1)の傷病休職の場合と実質的に同視できる程度に通常勤務を行うことに相当程度の支障をきたすものである場合に、初めて同項(6)の休職事由に該当するものというべきである。 〔労働契約-労働契約上の権利義務-就労請求権・就労妨害禁止〕 原告は、就労請求権及びこれに基づく賃金請求権の侵害を理由に、被告の不法行為を主張しているところ、一般に、使用者は、賃金を支払う限り、提供された労働力を使用するか否かは自由であって、労働受領義務はなく、労使間に特約がある場合や特別の技能者である場合を除いて、労働者に就労請求権はないものと考えられ、本件における原告にも就労請求権はないものと認められるから、就労請求権の侵害を前提とする原告の損害(弁護士費用)賠償請求は理由がない。 |