全 情 報

ID番号 06552
事件名 休職命令無効確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 富国生命保険(第一回、第二回休職命令)事件
争点
事案概要  生命保険会社が、頚肩腕障害の症状のある職員に対して通常勤務に耐えられない状態であり、症状の再燃および増悪の可能性があるとして行った休職命令(第一回・二回休職命令)の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 休職 / 傷病休職
裁判年月日 1995年8月30日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 平成6年 (ネ) 2275 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集46巻4号1210頁/労働判例684号39頁
審級関係 一審/06365/東京地八王子支/平 6. 5.25/平成5年(ワ)1819号
評釈論文
判決理由 〔休職-傷病休職〕
 控訴人は、すでに約一年四か月にわたる長期の傷病欠勤をしていた被控訴人から平成四年八月二四日に医師の診断書を添えて出勤の申し出を受け(就業規則三四条三項)、検討のすえ、同年一〇月一四日をもって、被控訴人が就業規則に従った通常勤務を行うことができるものと判断してその傷病欠勤の扱いを解くこととし、被控訴人に対し同年一二月一日から出勤されたいとの命令を発していること、これに基づき、被控訴人は、同日から職場に復帰し、以後第一回休職命令が発令されるまでの約三か月間就業規則に従って通常勤務を行っていたこと、この間、被控訴人は、週一回程度、就業時間外に通院治療を受けていたが、頸肩腕障害の症状が特別に悪化するようなことはなかったことなどを総合すると、平成五年三月一日時点において、被控訴人が就業規則四八条一項一号の場合と実質的に同視しうるような長期間の傷病欠勤を継続し、被控訴人の傷病の内容、程度が通常勤務に支障を生ずるほどのものであったとは到底認められないから、同条項一号に準ずる休職事由があるとは認められず同条項六号の休職事由には該当しないというべきである。〔中略〕
 控訴人の会社における、職員の業務外及び通勤災害以外の傷病による欠勤及び休職の制度は、基本として、(一)職員が業務外等の傷病による欠勤の申出をし控訴人がその事実を認めた場合に傷病欠勤として取り扱われ、(二) その傷病欠勤が勤続年数に応じて定められている一定の期間(同規則三二条一項一号)以上継続した場合には六か月の休職が命ぜられ(同規則四八条一項一号)、例外的に右休職の要件が備わっていないときでも、それに準ずるやむを得ない理由があると認められるときはその都度定める期間の休職が命ぜられ(同条項六号)、(三) さらに、右六か月の休職期間満了後も傷病欠勤が止まず復職が命ぜられないときは、職員は自動退職になる(同規則五七条二号)というものである。したがって、同規則三二条一項一号に定める期間の傷病欠勤をしても、その後、医師の証明書を提出して出勤の申し出をし(規則三四条三項)会社がこれを承認して出勤を命じ、これに基づいて職員が相当の長期間にわたり就業規則に従った通常勤務を行っている場合には、もはや右休職を命ずる前提としての傷病欠勤の存在がなくなるのであるから、傷病欠勤と短期間の出勤を繰り返すなどの特段の事情のない限り、たとえ、職員の傷病が治癒しておらず治療中であり、将来その症状が再燃し増悪する可能性がある場合であっても、それを理由として職員に対し無給等の不利益を伴う右休職処分を命ずることは許されないというべきである。本件においては、被控訴人の頸肩腕障害が治癒せず治療中でありその症状は将来再燃、増悪する可能性があるが、被控訴人は、長期間の傷病欠勤後、控訴人の承認の下に復職してすでに約三か月通常勤務を行っていたものであるから、右特段の事情があるとは認められず、控訴人は、被控訴人に対し右休職処分ができないものである。