全 情 報

ID番号 06563
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 国民金融公庫事件
争点
事案概要  金融機関の業務役にあった者が定年退職前一年間に約二八四時間の時間外勤務を行ったのに対して公庫が同人を労働基準法四一条二号の管理監督者として取扱い時間外割増賃金を支払わなかったのは違法であるとして右賃金を請求した事例。
参照法条 労働基準法32条
労働基準法41条2号
体系項目 労働時間(民事) / 労働時間・休憩・休日の適用除外 / 管理監督者
賃金(民事) / 割増賃金 / 割増賃金の算定方法
裁判年月日 1995年9月25日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成5年 (ワ) 10715 
裁判結果 認容,一部却下
出典 労経速報1579号3頁/労働判例683号30頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-割増賃金-割増賃金の算定方法〕
 本件当時、原告に対しては、超過勤務命令書による時間管理はなされていなかったものであるが、仮に右書面による超過勤務命令がなされていなくとも、原告が実際に業務上の必要から終業時刻を過ぎても千住支店において就労を続けており、それを管理者である総務課長以上の管理職が黙認しているような状況が認められるならば、原告の時間外手当の請求は認められるべきであるが、そのためには右のとおり時間外労働と認められるべき原告の就労時間が確定できることが必要である。
 そこで、本件手帳の残業時刻メモの記載により、原告の右時間外労働の時間を確定できるかを検討するに、残業時刻メモの記載中には、前記3認定のとおり、個別にみて事実とは認められない矛盾例がある〔中略〕
 結局、本件手帳中の残業時刻メモの記載は、前記3認定のとおりの具体的な矛盾例があるうえに、右認定のとおり全体としても不自然な部分があること、さらには残業時刻メモの客観的記載中にも、一度記載した後にそれを訂正したと思われる部分や、そのうち何れが訂正後のものかの判別が困難なものなど不明確な部分があることなどに照らせば、右残業時刻メモの信用性は全体として低いものと言わざるを得ず、また、前記一認定の原告の職務内容自体からも必ずしも一定の残業時間が生じるのが必然であるとまでは認められないのであって、証拠(〈人証略〉)により本件当時、原告が終業時刻を過ぎても千住支店において就労し、これを管理者である上司が黙認していた時期があったことは認められるものの、結局右残業時刻メモの記載のみから、右記載どおり、あるいは右記載のうちある部分のみは少なくとも真実であるとして、原告の時間外労働の時間を確定することはできないものという他はなく、右残業時刻メモから直ちに原告の時間外労働時間を認定することはできない。
〔労働時間-労働時間・休憩・休日の適用除外-管理監督者〕
 被告における業務役一般の職位、及び、本件当時の千住支店における原告の業務役としての具体的職務については前記一で認定したとおりであり、被告における業務役の地位は本来の管理職の系列には属さない補佐的な役割を有するにとどまり、原告の場合も、総務課長の権限の一部として検印業務等を行っていたものであるが、労務管理に関する具体的な権限としては、前記二認定のとおり、契約係職員に対する超過勤務命令につき、総務課長とともに支店長に対して具申する権限を有していたことは認められるものの、それ以上に被告の経営方針の決定や労務管理上の指揮権限につき経営者と一体的な立場にあったことを認めるに足りる事実は存在せず、被告における業務役は、前記二認定のとおり、本件当時は超過勤務命令及び時間外手当の支給の対象とはされていなかったものの(その後平成五年三月以降は支給対象となったことは既認定のとおりである)、その他の出退勤の管理については一般職員と同様であったことが認められるのであり、以上に照らせば、被告における業務役の職位が労基法四一条二号にいう「管理・監督者」に該当するとは認められない。