ID番号 | : | 06572 |
事件名 | : | 地位保全金員支払等仮処分命令申立事件 |
いわゆる事件名 | : | ダイエー事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 警備会社へ出向し業務部次長の職にあった者が出向先から一〇万円着服したとして懲戒解雇され、その効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 労働基準法20条3項 労働基準法19条2項 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為 解雇(民事) / 解雇制限と除外認定 懲戒・懲戒解雇 / 二重処分 |
裁判年月日 | : | 1995年10月11日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 平成7年 (ヨ) 1819 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労経速報1586号9頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇手続-解雇理由の明示〕 本件着服行為当時、債権者は、震災後の対応業務のストレスの中で、肉体的のみならず、精神的にも、かなり疲労していたものであることは、容易に想像される。しかし、当時の債権者の精神的状態は、いまだ、事理弁識能力が欠落し、あるいは著しく劣っていたものとまでの疎明はなく、前記のように、仮にその動機が魔がさしたことによるにせよ、当時において、行為の重大さに思いを致し、着服を思い止まることは十分に可能であったと考えられる。そして、着服金額が、一〇万円という、小遣い銭よりも高額で、比較的まとまった額であることや、西日本統括本部業務部次長という債権者の地位にもかんがみると、精神的な疲労や、行為の偶発性をもって、債権者の本件着服行為の責任を軽減することは、企業秩序の維持の観点から、なお困難といわなければならない。 そして、審尋の結果によれば、債務者においては、本件のような着服行為については、従来からかなり厳しい処分をもって臨んできたものであることが疎明されるところ、小額の現金の着服等が比較的発覚しにくい職場である大型スーパーマーケットの経営を主たる業務内容とする債務者においては、かかる処分傾向も、いちがいに過酷に過ぎるものと評価することはできない。そして、(書証略)により疎明される債務者における過去の懲戒事例に照らしても、本件解雇が特段重きに失するとはいえない。 〔懲戒・懲戒解雇-二重処分〕 前記のとおり、債権者は、A会社から、平成七年二月二五日から六月二日までの間、自宅待機を命ぜられたが、(書証略)によれば、出勤停止(就業規則六二条一項三号)は、給与を支給しないものであるところ、審尋の結果によれば、前記の自宅待機期間中は、給与が支給されたことが明らかである。債権者の主張するように、仮にこの自宅待機期間中、著しい精神的苦痛を受けたとしても、事実上の問題にとどまり、このことをもって、直ちに、右の自宅待機が実質的に出勤停止にあたるとか、本件解雇が二重処分にあたって無効であるということはできない。 〔解雇-解雇制限と除外認定〕 本件解雇は、行政官庁の認定を受けていないから、労働基準法二〇条三項、一九条二項に違反する無効のものであると主張する。しかし、同法一九条二項の行政官庁の認定は、解雇予告手当を支給しない解雇の場合に必要なものであって、懲戒解雇の場合であっても、解雇予告手当を支給する場合は、右認定は要しないものであることは、右各項の解釈上明らかというべきところ、前記で疎明されたとおり、債権者は、解雇予告手当の支給を受けているから、本件解雇が労働基準法二〇条三項、一九条二項に違反する無効のものであるということはできない。 |