全 情 報

ID番号 06584
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 丸彦製薬事件
争点
事案概要  米菓製造会社で製造工として勤務していた従業員二名が、地位保全仮処分申立て書を報道機関に開示して新聞報道させたり、上司を呼び捨てにしたり乱暴なことばづかいをしたこと等を理由として解雇され、その効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
労働基準法3章
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
賃金(民事) / 賃金・退職年金と争訟
裁判年月日 1995年10月31日
裁判所名 山形地
裁判形式 判決
事件番号 平成4年 (ワ) 279 
裁判結果 認容,一部却下
出典 労働判例690号71頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕
 被告会社は、原告らが従前から非違行為を繰り返していたとしながら、就業規則に定める他の懲戒(被告就業規則五〇条によれば、懲戒の種類として、懲戒解雇のほか、訓戒、昇給停止、減給、出勤停止、役職剥奪、諭旨退職が定められている。)を行うことなく(この事実は当事者間に争いがない。)、平成四年五月二二日の段階に至って原告らに対し最も重い懲戒である懲戒解雇の処分を行ったことは、新庄工場における新勤務体制の導入に反対する姿勢を維持している原告らを懲戒解雇の名目で職場から排除しようとする意図に基づくものと推認せざるを得ない。
 したがって、被告の原告らに対する本件解雇は、解雇権の濫用として、その効力を生ずるに由ないものというべきである。
〔賃金-賃金・退職年金と争訟〕
 以上のとおり、原告らの本訴請求は、被告に対し、原告らが雇用契約上の地位を有することの確認を求める点、平成四年五月一日以降本判決確定に至るまで毎月末日限り原告X1が月額金一七万九三〇〇円、原告X2が月額金一八万一五〇〇円の各割合による賃金の支払を求める点はいずれも理由があるからこれを認容する。但し、原告らは一部将来の賃金額の給付を求めているが、本判決が確定して原告らが雇用契約上の地位を有することが確認されれば、その時において、被告の任意の履行を期待できるしその可能性もあるのであるから、本判決確定の日の翌日以降の分についてまで、現在において将来給付の請求を認める必要性がないと解するのが相当である。したがって、原告らの本判決確定の日の翌日以降の賃金請求の部分は訴えの利益がないからこれを却下することとする。