ID番号 | : | 06588 |
事件名 | : | 遺族補償給付等不支給処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 足立労働基準監督署長(本間製作所)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 労災保険の特別加入を認められた「建設業の一人親方」が注文を受けた工作物を製作し、納品のため自家用トラックで搬送中に製品の落下により下敷きとなって死亡したケースで、「業務上」と認められるかどうかが争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働者災害補償保険法27条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 労災保険の適用 / 特別加入 |
裁判年月日 | : | 1995年11月9日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成6年 (行ウ) 247 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 時報1551号133頁/労働判例684号16頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-労災保険の適用-特別加入〕 労災保険は、労働基準法上の労働者の労働災害に対する保護を本来の目的とする制度であるから、事業主、自営業者等のように労働者でない者に対しては保護が及ばないのが原則である。しかし、労働者でない者の中には、業務の実態、災害の発生状況等から、労働者に準じて労災保険制度により保護するのが相当と考えられる者が一部存在することも事実である。 そこで、これらの者について、右のような労災保険制度の本来の目的を損なわず、かつ、災害が発生した場合の業務上外の認定等の保険技術的に可能な限りにおいて、特例として保険加入を認めることとした制度が特別加入制度(法二七ないし三一条)である。したがって、特別加入制度は、すべての業種について認められるわけではないし、特別加入者の被った災害が業務災害とし保護される場合の業務の範囲は、労働者の行う業務に準じた業務の範囲に限られるのであって、特別加入者の行うすべての業務に対して保護が与えられるのではない。 このような特別加入制度の趣旨から、法二七条、規則四六条の一七により加入することができる者の範囲が制限されている。また、特別加入者の業務又は作業の内容は、労働者の場合と異なり、労働契約に基づく他人の指揮命令により決まるものではなく、自己の判断によって決まる場合が多いので、その業務又は作業の範囲を確定することが通常困難となるため、保険技術的な面から、規則四六条の二六により、特別加入者についての業務上外の認定は、労働省労働基準局長が定める基準によって行うこととされている。これを受けて、同局長は、基発第六七一号通達により、業務遂行性及び業務起因性について基準を定めている。 一人親方については、法二七条三号の「労働省令で定める種類の事業を労働者を使用しないで行うことを常態とする者」に該当する場合には、特別加入をすることができるところ、右「労働省令で定める事業の種類」は、規則四六条の一七で定められている。一人親方として特別加入することができる建設事業の内容については、業務の危険度、業務の範囲の明確性ないし特定性等を考慮して、規則四六条の一七第二号により、「土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業」とされており、建設業の一人親方等の業務上外の認定に関しては、基発第六七一号通達では、別紙(関係部分のみ抜粋)のとおり定められている。そして、前記のとおり特別加入制度の趣旨から加入できる者の範囲が限定されていること、製造事業の一人親方については規則四六条の一七には規定されておらず、法二七条三号に規定される者には該当しないので特別加入はできないこと、同通達の第一の一の(2)のイの(ハ)の(注)において、別紙のとおり、請負契約によらないで製造又は販売を目的として建具等を製造している場合につき業務遂行性を認めないものとしていることなどに照らすと、同通達にいう「請負契約」ないし「請負工事」とは、建設業における請負工事契約ないし建設業における請負工事であると解するのが相当である。〔中略〕 右二で説示したことを前提として、本件災害における業務遂行性の有無を検討するに、前記認定事実によると、AはB会社から本件製品の製作を請け負ったにすぎないから、本件災害は、基発第六七一号通達第一の一の(2)のイの(ニ)の「請負工事に係る」ものではなく、したがって、業務遂行性が認められない。 原告は、特別加入制度等の趣旨に照らして、Aの業務は直接C会社から請け負った場合と実質的に同一の業務であると主張している。 しかし、右制度の趣旨については右二で述べたとおりであり、業務の点についても、C会社は下請業者のD商会には本件製品の製作を発注したにすぎないし、B会社、A間の請負契約では納品場所はB会社本社とされており、現にAは同所に納品しようとしたことからすると、B会社、A間の請負契約が本件製品の取付け工事を含むものでないことは明らかであるから、原告の主張は理由がない。 |