ID番号 | : | 06696 |
事件名 | : | 不当労働行為救済命令取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 三重近鉄タクシー事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 時間外労働については就労義務はないとして早退届を提出しないで七回にわたり早退したことを理由とする諭旨解雇ないし懲戒解雇につき、本件就業規則および三六協定により時間外を含む拘束時間全体について就労義務を負っていたとして、右解雇は不当労働行為ではないとした中労委命令を維持した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法36条 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 労働時間(民事) / 時間外・休日労働 / 時間外・休日労働の義務 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤 |
裁判年月日 | : | 1996年8月15日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成7年 (行ウ) 117 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例702号33頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働時間-時間外・休日労働-時間外・休日労働の義務〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕 会社は、平成三年三月二一日、組合との間で本件拘束時間協定を締結したこと、平成四年三月三一日、組合との間で本件三六協定を締結して翌四月一日監督署に届け出たことが認められる。 したがって、原告は、会社から交番表の交付を受けたことにより、右交番表のいう拘束時間についての就労を命じられたとみるべきであり、原告用交番表の「時間外」を含む拘束時間全体について、就労義務を負っていたというべきである。 二 次いで、早退届の提出については、前記争いのない事実及び証拠(〈証拠略〉)によれば、本件就業規則六七条に社員の早退に関する定めがあり、会社は、早退の際、運行状況を正確に把握・管理するため、また、給与計算の簡便性から、所定の用紙による早退届の提出を求めていたこと、これは原告が入社する以前から行われており、原告以外の運転乗務員との間では特に問題となることはなかったし、原告自身も昭和六二年に乗務停止処分を受けて以来、早退するときは所定の早退届を提出していたことが認められる。 右認定の事実によれば、原告用交番表の「時間外」労働は本件就業規則六七条にいう「勤務中」に該当すると解され、また、会社が所定の早退届の提出を求めることは合理的理由があるから、原告が右「時間外」に退社する場合、会社に対し、早退届を提出する義務があったというべきである。 三 ところで、前記争いのない事実によれば、原告は、これまでに組合において四日市支部長、中央委員会の議長を歴任したほか、本件解雇当時、四日市支部の副支部長及び中央委員会の副議長を務めていたこと、原告は、昭和五七年ころから、定歩時間制度など会社の長時間労働に反対して監督署等への申告活動を行っていたこと、昭和六二年の本件と同様の早退届の不提出による乗務停止の懲戒処分に対し、右処分が不当労働行為であるとして三重県地方労働委員会に対し救済申立てを行ったこと、昭和六三年、四日市営業所の運転乗務員らとともに会社に対し、定歩時間における割増賃金の支払を求める訴訟を提起したこと、本件三六協定の締結の際、原告が中心となり四日市支部として同協定の締結に反対していたことが認められ、原告は、会社の労働時間制度などに関し、四日市支部の組合員として積極的な組合活動を行っていたものである。 しかしながら、先に判示したとおり、原告は、原告用交番表の「時間外」について就労義務があり、また、早退の際には早退届の提出義務を負っていたと解すべきところ、前記争いのない事実によれば、平成四年四月一一日から同月一九日まで、会社からその都度早退届を提出するよう注意、説得され、その間二回にわたり文書で注意を促されたにもかかわらず、右「時間外」については就労義務はないから早退届の提出義務はないとの確信のもとに、都合七回にわたり、早退届を提出することなく退社を繰り返したというのである。そして、証拠(〈証拠略〉)によれば、この過程において、原告の行動が四日市営業所の他の運転乗務員から注目され、「早退するのに早退届は要らないのか。要らないのなら私達も出さない。」といった声があがり始めていたし、加えて、原告は、昭和六二年にも本件と同様の問題を起こし、三回もの乗務停止の懲戒処分を受けていたこともあって、会社は原告の右一連の行動が会社の秩序を乱すものであり、本件就業規則一〇五条の諭旨解雇ないし懲戒解雇事由に該当すると判断して本件解雇に及んだものであることが認められる。 以上の本件解雇に至る経過に照らせば、原告が前記のとおり従来積極的な組合活動を行っていたからといって、会社が原告の組合活動を嫌悪して原告を排除する目的で本件解雇を行ったとは到底認めることはできず、他に本件解雇が不当労働行為に該当すると認めるに足りる証拠はない。 |