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ID番号 06712
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 東日本旅客鉄道事件
争点
事案概要  国労のマーク入りベルトを着用して就労した組合員に対し、会社が仕事として就業規則の書き写し等を命じたことは人格権を侵害しているとして、会社に損害賠償の支払を命じた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働組合法7条
民法709条
民法710条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 業務命令
裁判年月日 1990年12月14日
裁判所名 秋田地
裁判形式 判決
事件番号 平成2年 (ワ) 94 
裁判結果 認容,一部棄却
出典 労働判例690号23頁/労経速報1603号20頁
審級関係 上告審/06770/最高二小/平 8. 2.23/平成5年(オ)502号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-業務命令〕
 2 右事実に基づき、本件教育訓練の違法性についてみるに、就業規則の書き写し行為それ自体は、一定の苦痛をともなうものであるが、教育訓練としての目的、効果、方法等に照らし、これをもつて直ちに違法なものとはいえないけれども、被告Yによる本件教育訓練は、多数の職員の面前で原告の行為を非難したうえ、他の職員のいる事務室において、およそ一日半にわたつて就業規則の書き写し等を行わせたものであり、その間、職員の前で原告を大声で怒鳴つたり、原告が用便に行くのを制限するなど、被告Yが自己の仕事の傍ら原告の教育訓練を監督せざるを得なかつたことや、原告の本件教育訓練に臨む態度が必ずしも真摯なものではなかつたことなどの事情を考慮しても、教育訓練としては著しく妥当性を欠いたものといわざるを得ない。本件教育訓練は、その態様からすると、就業規則の書き写し等のそれ自体による効果よりも、他の職員の面前において行わせた、いわばみせしめによる効果を狙つた、懲罰的な教育訓練といわざるを得ず、しかも、本件教育訓練は、客観的には就業規則に違反していないにもかかわらず、違反しているとしてなされたもので、本件教育訓練を命じたことにつき合理的な理由がなかつたことも併せ考えれば、かかる教育訓練の方法は、原告の人格を著しく侵害し、教育訓練に関する業務命令の裁量の範囲を逸脱した違法なものであつて、原告に対する不法行為を構成するといわざるを得ない。
 3 したがつて、被告Yは民法七〇九条により、被告会社は、被告Yの右行為が職務の執行としてなされたものであるから、同法七一五条により、それぞれ本件教育訓練によつて生じた原告の損害について賠償責任を負担する。