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ID番号 06735
事件名 解雇無効確認請求事件/建物明渡請求事件
いわゆる事件名 トヨシマ事件
争点
事案概要  台湾の子会社に出向しその工場の工場長として勤務していた労働者が、仮払い金名目の金員を着服したとして出向元会社によって懲戒解雇され、その無効を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為
裁判年月日 1995年9月27日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成7年 (ワ) 3369 
平成7年 (ワ) 4503 
裁判結果 棄却
出典 労働判例688号48頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕
 2 被告の出向規程(〈証拠略〉)は、出向者が、出向先において、制裁に該当する行為をした場合には、被告の就業規則に基づき処分する旨定め(一〇条二項)、被告の就業規則(〈証拠略〉)は、従業員の懲戒の種類を、譴責、減給、昇給停止、降格、諭旨解雇及び懲戒解雇とし(五七条)、その基準として、「業務に関し不正を働き、金員その他私利をはかったとき」を諭旨解雇及び懲戒解雇事由とし(五八条四項八号)、情状により、処分を加重又は軽減する旨定めているところ(同条)、1判示の原告の行為は、就業規則所定の懲戒解雇事由である「業務に関し不正を働き、金員その他私利をはかったとき」に当たることが明らかである。
 そして、原告は、被告のほぼ一〇〇パーセント出資の子会社である訴外会社の工場長として、工場に働く全従業員を管理監督すべき地位にある上、昭和六二年ころ以降、被告が派遣した日本人の出向者が現地責任者であるAと原告のみであったことからすれば(〈証拠略〉)、訴外会社の管理者として、その職務上の責任が極めて重かったにもかかわらず、二五〇回以上の多数回にわたり、同社の金員を私用に費消したものであり、その行為態様自体、被告及び訴外会社の職場秩序を著しく害するものであることが明らかである上、費消額も邦貨で約一一〇〇万円を超える莫大なものであり、原告自身、返済する資力に乏しいことを自認していること(〈証拠略〉、原告本人尋問の結果))(ママ)に照らせば、被告に与えた損害も甚大で回復困難であり、以上のような職場秩序違反の内容、程度、被告の損害など本件における諸般の事情に照らし、本件懲戒解雇が重きに失するということはできない。
 3(一) 原告は、本件仮払金を借り受けたものであり、返還の意思を有していたので、懲戒解雇事由に当たらない旨主張するようである。
 しかし、たとえ、後日返還する意思があったとしても、訴外会社の金員を職務外の使途に充てるために交付を受け、これを飲食代、遊興費等の私用の目的に費消した上、決算期に仮受(ママ)金として累積額を帳簿に記載させるという行為態様自体、被告及び訴外会社の職場秩序を著しく害するものであること、原告が交付を受けた金員の総額が邦貨で一一〇〇万円を超え、原告の資力では返済困難な莫大な額になっていることに照らせば、原告の右行為は、たとえ、原告に返済の意思があったとしても、訴外会社及び被告が承認を求められても承認しないことが明らかな行為であって、就業規則所定の懲戒解雇事由である「業務に関し不正を働き、金員その他私利をはかったとき」に当たることが明らかであり、原告の右主張は、採用できない。