ID番号 | : | 06738 |
事件名 | : | 地位保全等仮処分申立事件 |
いわゆる事件名 | : | 大阪相互タクシー事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 欠勤扱いを回避するため、課長に自己の担当車両の料金メーターを倒してもらい、待ち時間料金を納入したタクシー運転手に対する懲戒解雇につき、右「入れチャボ」行為に対して事前警告なしに懲戒解雇をすることは重きに失し無効とした事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 民法1条3項 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為 |
裁判年月日 | : | 1995年10月24日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 平成6年 (ヨ) 3222 平成6年 (ヨ) 3260 |
裁判結果 | : | 認容,一部却下 |
出典 | : | 労働判例692号67頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕 四 以上によれば、債務者においては、欠勤扱い回避目的の入れチャボは過去相当程度行われており、指導部はもちろん、部長ら管理職もこれを認識していた事実が認められる。平成六年八月八日、Aについて入れチャボが行われなかったのは、前記認定のとおり、多くの部課長のいる言わば公然の場で、有給休暇取得の要件を満たさない申出がなされたことが明らかとなってしまったため、入れチャボをするわけにはいかなくなったためであると考えられるものである。このように、債務者において、入れチャボは公然と許可されているものではないけれども、入れチャボをした従業員に対して、これを理由として懲戒処分をした例は過去にないことでも分かるように、債務者は入れチャボがなされていることを認識しつつもこれを不問に付するという態度を取っていたものと評価されるものである。前記のとおり、欠勤扱い回避目的の入れチャボは、それ自体をみると違法性のあるものであり、債務者の従業員賞罰規程の懲戒解雇事由にも形式的には該当するものであるけれども、右のような事情に照らせば、右入れチャボ行為をしたことを理由に、何らの事前警告を発することなく懲戒解雇処分に付するのは重きに失するといわざるを得ない。 又、Bについては、債務者の本件入れチャボに関する調査につき虚偽の供述をし、反省の情がないことも懲戒解雇理由として挙げられているけれども、入れチャボに対する債務者の従前の態度が前記のとおりであったことに照らせば、右事実があったとしても、Bに対して懲戒解雇をもって臨むのはやはり重きに失するものである。 右のとおり、本件各懲戒解雇はいずれも無効である。 |