ID番号 | : | 06739 |
事件名 | : | 地位確認請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 九州朝日放送事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | アナウンサーとしての業務に従事していた者が情報センターにおけるニュース編成・情報整理・情報収集等の業務に配転され(第一次配転)、その後さらに情報センターの廃止に伴い、報道局報道部ラジオニュース班への配転を経て、テレビ編成局番組審議会事務局に配転を命じられ(第二次配転)、アナウンサーとしての業務に従事できなくなったとして、配転の効力を争い、アナウンサーとしての業務に従事する労働契約上の地位確認を求めた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠 |
裁判年月日 | : | 1995年10月25日 |
裁判所名 | : | 福岡地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成2年 (ワ) 2732 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例692号57頁/労経速報1607号16頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕 一般に、アナウンサーとは、音色・発声・発音・アクセント・話術などのアナウンス技術についての特別の教育・訓練を受けた者であって、労働契約上アナウンサーとしての業務、すなわちテレビやラジオの放送業務におけるアナウンス業務を中核としつつ、これと密接な関連を有する一定範囲の周辺業務に従事する者であると定義するのが相当である。 この点、被告は、第一次配転当時は、アナウンス部に配属された者がアナウンサーであると定義しているが、後に判示するとおり、被告においては、アナウンサーたる地位を離れる者がアナウンス部から他の部署に配転されるとの事実上の運用がなされていたにすぎず、アナウンス部からの配転によってアナウンサーたる地位が失われているわけではないから、右被告の主張を採用することはできない。 また、原告は、アナウンサーとは「アナウンサーとして発声や読みの訓練を受け、アナウンサーとしての自覚のもとに、マイクの前で話すことを仕事としている者」であると主張するが、アナウンサーか否かは労働契約上の法的地位であって、客観的に決定されるべきものであり、かつてアナウンサーとしての訓練を受けた者がたまたまアナウンス業務に従事した場合にも、主観的にアナウンサーであると自覚していさえすればアナウンサーたる地位を有するということはできないから、右原告の主張もまた採用することができない。〔中略〕 前記二、三において認定した各事実を総合すると、被告が昭和五九年夏期の人事異動の機会及び昭和六〇年二月一四日からの原告に対する情報センターへの配転についての意向打診及び説得に際し、原告に対し、それまでのアナウンサーとしての業務、すなわちアナウンス業務を中核としつつ、これと密接な関連を有する一定範囲の周辺業務に従事することを内容とする労働契約から情報センターにおけるニュース編成・情報整理・情報収集等の業務(一部アナウンス業務を含む。)に従事することを内容とする労働契約への契約内容の変更を申し入れたのに対し、原告は右職種変更を伴う第一次配転について同意し、これを前提として、被告において昭和六〇年三月一日に第一次配転を発令したものであり、原告はその時点でアナウンサーとしての業務に従事する地位を喪失したものと判断するのが相当である。〔中略〕 以上の検討によれば、原告は第一次配転によって、既にアナウンサーとしての業務に従事する労働契約上の地位を失っているものというべきである。 また、被告が原告に対し、アナウンス業務に継続して従事させ、右業務から外さない旨保証した事実も認めることができないから、原告が右業務に従事することを要求しうる労働契約上の地位を有するともいえない。 そして、仮に第二次配転が原告の主張するとおり無効であったとしても、そのことは第一次配転後の原告の右地位に影響を与えるものではないから、その余の事実について判断するまでもなく、原告の請求には理由がないというべきである。 |