ID番号 | : | 06756 |
事件名 | : | 転勤命令効力停止処分申立事件 |
いわゆる事件名 | : | 西日本旅客鉄道事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 新幹線運転士に対する車掌及び在来線の運転士への配転につき、本件では職種は限定されておらず、業務上の必要性もあり、人事権の濫用に当たらないとして、有効とした事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用 |
裁判年月日 | : | 1995年12月28日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 平成6年 (ヨ) 2168 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労働判例691号68頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕 以上、本件新幹線乗務員数に関する協定及び本件議事録確認からは、債務者は、新幹線運転士の二名乗務から一名乗務による運転士の余剰の活用については、当面は新幹線内での効果的な運用を図ることを確認したものであって、新幹線運転士を新幹線外の勤務に配転しないことを確認したとまでは解することはできない。 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕 三 争点5について(配転命令権の権利濫用) 1 債務者の就業規則によれば、業務上の必要性がある場合には職員に配転命令ができる(〈証拠略〉)。そこで、債権者らの配転が業務上の必要性があるか検討する。 本件疎明資料によれば、債務者は、平成二年一〇月新幹線の乗務員の乗務員数の変更を行い、運転士を一名削減し、余剰となった運転士については車掌として巡視教育を行い、車掌に充てた。しかし、そのような努力にかかわらず、新幹線の運転士は、車掌の巡視検査及び応急措置業務の教育の実施終了時の平成六年四月一七日一一五名の余力が発生する結果となった。その後の新幹線車掌への運用等による活用を図ってもなお約五〇名もの余剰人員が発生することになった(〈証拠略〉)。 他方、在来線の運転士の要員需給は予想していたよりも少なかった。債務者は、平成二年段階で二ないし三年先までに在来線運転士の養成が会社全体で約三五〇名必要であり、関西国際空港開港に伴うアクセス輸送にもさらに要員が必要になると想定した(なお、平成五年ころには、景気後退により、在来線の需要がそれほど見込まれることがなくなった結果、当初予定していた約三五〇名もの増員は不要となった。)。 そこで、債務者は、極力効率的体制を作って、要員増を抑制するとともに、在来線の運転士について車掌から運転士に登用するという本来のルートからだけでなく、あらゆる系統から運転士を養成する特例募集を開始した(〈証拠略〉)。特例募集は平成二年及び平成三年では年各一回、平成五年には年二回実施され(〈証拠略〉)、平成五年度には昭和五七年以降中止していた高卒社員の新規採用を実施することにした。しかし、要員の確保は困難で、養成ラインを追加して平成四年当時年二回を平成五年一一月には年五回に増やしたが(〈証拠略〉)、退職前提休職制度の影響からも休職者が急増し(〈証拠略〉)、在来線の運転士の手当が困難であった。 関西国際空港開港は平成五年六月ころに具体化し(〈証拠略〉)、同年八月下旬ないし九月上旬に開港する見通しが強くなった。その結果債務者において平成六年六月段階で関西国際空港開港に伴うアクセス輸送のための要員を六〇ないし八〇名と想定したが、右確保は前記事実から困難な状態であった。また、平成六年四月当時債務者の近畿三社(大阪、神戸及び京都の支社)で合計五六名過員となり、教育及び病欠者等を考慮すると一六名の余剰となるが、大阪支社だけでは八名しか余裕がなく、新規養成の職員は約四〇名程度であるために、退職者を想定すると約二〇名程度不足することが判明した(〈証拠略〉)。 そこで、債務者は、平成五年一一月ないし一二月ころ、新幹線の運転士の活用を計画し、平成六年四月一八日段階で、在来線の運転士の余剰人員を過去の病気ないし教育のために勤務を離れる者の人員確保のための余剰人員が約四〇名であったことから、同人数程度は必要であり、過欠人員を一六名と想定した。一方、関西国際空港の開港に伴うアクセス輸送のために人員が約六〇ないし八〇名必要であることが想定された。そこで、債務者は、そのうち新規運転士の養成により約四〇名を見込むことができ、退職者等を見込むと、新幹線運転士から約二〇名ほどを在来線運転士へ配置換えを行えば足りると判断した。しかし、実際には、新規養成者の中には運転士としての適正(ママ)がない者もいたことから予想程人員が増えることがなく、平成六年九月段階では、新規の運転士は約一八名しか増えなかった。そのために、債務者は効率的な態勢を組んで関西国際空港のアクセス輸送のための人員増を約五三名に押さえた(〈証拠略〉)。 在来線の運転士は、動力車操縦者運転免許が必要である(〈証拠略〉)。しかし、右選定に当たっては、短期的に在来線への運転士を養成する必要から(免許保持していない者については研修が九か月、新幹線免許保持者では研修が五か月、EC免許保持者では研修が二〇七時間)、既に甲種電気車免許(EC、以下「EC免許」という。)を保有する者で養成のために柔軟に対応できる年齢を考慮してできるだけ若年者層から選定することにし、さらに在来線での運転士経験が一年未満の者を除外した(〈証拠略〉)。その結果、債務者は、大阪新幹線運転所所属の運転士二三名を選定した。 大阪新幹線運転所所属の新幹線運転士でEC免許保有の者は、五九名存在したが、そのうちJR西労の組合員が五六名占めていたことから(〈証拠略〉)、二三名中二一(ママ)名がJR西労の組合員であった(争いのない事実)。 以上の事実から、債務者の債権者らに対する本性配転命令には、業務上の必要性のあることが認められる。 |