ID番号 | : | 06764 |
事件名 | : | 地位保全及び賃金仮払仮処分申立事件 |
いわゆる事件名 | : | 中部交通事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 観光バスに乗務してバスガイド業務を行うことを内容とする、契約期間を一年とするアルバイトガイド契約を締結していた労働者が、一〇回にわたって右契約を更新された後更新を拒否され、その効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法14条 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め) |
裁判年月日 | : | 1996年2月1日 |
裁判所名 | : | 名古屋地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 平成7年 (ヨ) 411 |
裁判結果 | : | 認容,一部却下 |
出典 | : | 労経速報1618号16頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕 債権者は、債務者のアルバイトガイドとして、債務者会社の指揮命令の下、その乗務指示に従って観光バスに乗務していたこと、その乗務に対する対価として、債務者から債務者が予め一般的に定めた基準に従った「賃金」と称する報酬の支払を受けていたことが明らかであるから、債権者・債務者間で締結された本件契約は労働契約であると解するのが相当であり、これがバスガイド乗務に係る個別の請負契約についての基本契約である旨の債務者の主張は採用することができない。 そして、前記一の認定事実によれば、債務者におけるアルバイトガイドは、一年間の期間を定めた契約に基づき勤務しているとはいえ、実際上は、債務者の観光バス業務を運営するについて不可欠であるはずのバスガイド業務全体の大半を担当しているため、本人が希望すれば原則的にその契約が更新され、債務者におけるバスガイドのいわば主力メンバーとして恒常的に勤務している状況にあること、アルバイトガイド契約の更新はそれほど厳格ではなく、契約書用紙及び契約内容も基本的には毎回同じものであったこと、債権者の本件契約は昭和五八年以降一〇回にわたって何の問題もなく更新が繰り返され、平成六年八月三一日までの間その契約関係が一一年間継続していたことが認められ、これらの事実を総合すると、本件契約には期間の定めが一応あるものの契約当初から当事者のいずれかから格別の意思表示がない限り当然更新されるべきことを前提としてこれを締結しており、現実に、その後一〇回にわたって、一応定められていた一年間の期間を満了する度に、毎年更新を重ねて継続されていたというのであるから、遅くとも、最後の更新がされる前の時点である平成六年八月三一日までには、債権者・債務者間には、あたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態が成立していたものと認めるのが相当である。そうである以上、本件において、仮に、いわゆる使用者の雇止め等、債務者の債権者に対する解雇と同視できるような事実が認められるならば、そこにはいわゆる解雇権濫用の法理が類推適用されて然るべきものと解される。〔中略〕 債権者・債務者間には、遅くとも最後の更新がされる前までには、実質上期間の定めのない契約と同視できる状態が成立していたと認められるところ、前記1で認定した事実によれば、債務者のA所長が債権者に対してした本件告知は、右期間の定めのない契約と同視できる継続的関係を一方的に解約する解雇と実質的に異なるところはないというべきであるから、これについてはいわゆる解雇権濫用の法理を類推適用することができるものと解するべきである。 そして、前記1の認定事実によれば、債務者が本件告知をした理由は、債務者の繰配を担当するB助役の業務に債権者が日頃から不平不満を述べたり、管理者らに文句を言ったりすることがしばしばあったということと、平成六年六月六日の債権者の乗務の際に、後日第三者から苦情が寄せられるような対応を債権者がしたことがあったということに尽き、それ以上に、債権者の本務であるバスガイドとしての乗務を理由なく拒否したりするなどの事実は認められず、また、問題とされる右の債権者の勤務態度についてみても、上司から何度も債権者に注意するなどの措置を執ったにもかかわらず、その改善がされなかったという事実や、その不良な勤務態度が債務者会社の従業員の士気を低下させたり、社内の秩序を乱すに至ったなどの事実も窺われないのであって、そうである以上、債権者の右の勤務態度だけを理由にして債権者に対し実質上解雇と同視される本件告知を行うことは、解雇権の濫用に当たるものとして無効というべきである。 |