全 情 報

ID番号 06765
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 道路エンジニアリング事件
争点
事案概要  雇用期間を一年とする雇用契約を締結し、常駐嘱託員として首都高速道路の巡回点検業務に従事してきた労働者が、巡回点検業務の縮小、勤務態度不良、配置換えの余地がないことを理由として右嘱託員契約の更新を拒否されその効力を争った事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法21条
労働基準法14条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1996年2月2日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成6年 (ワ) 17244 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1590号16頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 本件労働契約は、労働契約書及び就業規則に期間の定め及び終了が明記され、更新手続は予め書面によって当事者間で個別に確認されているのであるから、当初から期間の定めのない契約であるとか、三回にわたる更新によって実質的に期間の定めのない契約に転化したということはできないというべきである。被告会社で原告と同じ形式で採用された嘱託員について、一年未満の退職者が多かったという事情があるが、これによって期間の定めが意味のないものであることを示しているということはできないし、嘱託員が高齢者によって占められていることからみても、本件労働契約は、嘱託員の個別事情と雇用量の調整とを図る目的で期間を定めたものと認めることができ、原告が期間満了後も当然に労働契約が継続するものと期待することに合理性があるとはいいがたい。したがって、被告会社の更新拒絶に解雇の法理を類推適用することはできない。
 しかしながら、被告会社の嘱託員の行う巡回点検業務は、恒常的に約一八名を必要としてきたもので、季節的ないし臨時的な作業ではないから、嘱託員の労働関係は、嘱託員の個別事情と雇用量の調整とが許す限り、ある程度継続することが見込まれていたものということができ、原告においてもその限度で労働関係が継続すると期待されていたものということができ、このような契約関係にある原告に対し、契約期間満了によって更新を拒絶し雇止めにするに当たっては、信義則上、雇止めにすることにやむを得ない合理的な事情があることを要するものと解すべきである。〔中略〕
 被告会社においては、平成六年四月以降は大幅な巡回点検業務の受注減による余剰人員が生じ、嘱託員を削減する必要が生じたため、就業規則上の嘱託契約解除の事由が発生したものであり、同月に更新時期を迎える嘱託員として原告を雇止めにする対象者に選定したものということができ、原告の勤務が被告会社にとって必ずしも十分なものではなかったことに照らすと、被告会社のした原告に対する雇止めがやむを得ない事情によるものであるということができ、これに先立って、他の嘱託員に希望退職を募り、あるいは配置換えの措置を採らなかったことが不合理であって、信義則上許されないとすることはできない。