全 情 報

ID番号 06766
事件名 地位保全等仮処分申立事件
いわゆる事件名 大阪神鉄交通事件
争点
事案概要  タクシー運転手の期間の定めのある雇用契約の雇止めにつき、実質的には期間の定めのない雇用契約に疑似しており、解雇法理が適用されるところ、雇止めを相当とする理由は認められず無効とした事例。
参照法条 労働基準法14条
民法628条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1996年2月7日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成7年 (ヨ) 3329 
裁判結果 認容,一部却下
出典 労経速報1590号13頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 1 債権者は、自主組合に属していたものであり、自主組合に属していた従業員は、いずれも、債権者と同様な雇用契約(すなわち期間の定めのある雇用契約)を締結しているものと考えられる。
 2 自主組合に属する従業員の内、勤続四年を越える者も一〇名以上存するものである。そして、自主組合に属する従業員は、全従業員の過半数を占めるけれども、同人らの間に自分達が臨時雇いであるとの認識が存するとは思われない。
 3 一年ごとの契約更新の手続は、仮に行われていたとしても、せいぜい、「又、働いてもらうから」等、口頭で告げられる程度の簡易なものであったと考えられる。
 4 現在まで、雇止めにより、更新を拒絶された例につき、債務者は疎明をしていない。
 二 以上によれば、本件雇用契約は、期間の定めのあるものであるけれども、その実態に照らせば、その雇用期間についての実質は期間の定めのない雇用契約に類似するものであるといえるものである。したがって、右雇用契約の更新を拒絶するについては、実質的に解雇と同様の法理(解雇権濫用禁止の法理)が類推適用されてしかるべきといえる。
 三 そこで、債務者の主張するところ(前記「債務者の主張の要旨」1の(1)~(5))を検討するに、右(1)~(5)の内、検討に値するのは、(5)のみであると考えられるところ、たとえ、(5)の如き行為が債権者にあったとしても、ことさら債務者の営業を妨害する意図のもとに行った等の事情がない限り、右事実のみを理由として雇止めをすることは、濫用にわたり許されないといわざるを得ない。そして、右害意等の事情を疎明する資料は存しない。又、他に、右雇止めを正当化するに足りる疎明もない。
 したがって、本件契約更新の拒絶は無効であり、許されないというべきである。