ID番号 | : | 06767 |
事件名 | : | 損害賠償等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 真田陸運事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 清涼飲料水を買主方に運搬した運転手が、買主の設置管理する簡易リフトに搭乗して運搬中に、右リフトのワイヤーが切れて転落して負傷した事故につき、買主の安全配慮義務違反を理由に損害賠償を請求した事例。 |
参照法条 | : | 民法415条 民法555条 民法709条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 1996年2月13日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成6年 (ワ) 1395 |
裁判結果 | : | 一部認容(確定) |
出典 | : | タイムズ916号166頁/労働判例690号63頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕 本件事故は、本件リフトのワイヤーの切断により発生したこと、本件缶ケースの重量が約一五〇キログラムであることはいずれも当事者間に争いがなく、また、前記認定のとおり、本件リフトの最大積載量が八〇〇キログラムであり、本件缶ケースの重量に台車の重量及び原告の体重を加えても、それが右最大積載量に達しないことは明白であり、前記の認定事実によれば、本件事故において他の要因が加わった事情も認められないから、本件リフトのワイヤーの切断が、本件リフトの最大積載量を超過したことによるものでないことは明らかであるところ、証人Aの証言によれば、本件リフトは、設置以来、本件事故までの間一度も点検されていなかったことが認められるから、本件リフトのワイヤーは、相当程度磨耗していたものと認めることができ、本件事故の原因は、原告が右ワイヤーの磨耗に気づかずに、本件缶ケースを台車に乗せて本件リフトに乗ったことにより本件リフトのワイヤーが切断されたことによるものと認められる。〔中略〕 原告は、訴外B会社と訴外会社との間の本件売買契約の履行として訴外会社と被告Y1陸運との間の運送契約に基づき、本件缶ケースを訴外B会社東京支店に運搬したものであり、その地位は、訴外会社の履行代行者たる被告Y1陸運の履行補助者にすぎず、本件事故当時、訴外B会社と原告との間に直接の契約関係があったとはいえないが、他方、訴外B会社は、自己の支配領域内である東京支店において、本件売買契約の履行として、訴外会社と被告Y1陸運との間の運送契約に基づき、その履行補助者たる原告に対し、前記認定のとおり、自己の従業員であるCをして、二階倉庫までの本件缶ケースの運搬を指示させたうえ、その施設の一部である本件リフトに乗ることを反復して指示させたものであり、このような場合、たとえ訴外B会社と原告との間に直接の契約関係がなくても、訴外B会社と原告とは、訴外会社との間の本件売買契約に基づき特別な社会的接触関係に入った者というべく、訴外B会社は、本件売買契約上の付随義務として、訴外会社の履行代行者である被告Y1陸運の履行補助者たる原告に対しても、その生命、身体の安全等を危険から保護するよう配慮すべき信義則上の義務を負っているというべきである。 ところが、訴外B会社は、前記認定のとおり、本件リフト設置後、本件事故に至るまでの間、本件リフトの点検等をしていなかったにもかかわらず、業務により訴外B会社東京支店の施設を利用する第三者に対する関係において、本件リフトへの搭乗禁止の趣旨を徹底せず、漫然とCが原告に対し、本件リフトに搭乗するよう指示していた事態を放置した結果、本件事故が発生したものであるから、右義務違反に基づき、原告に生じた損害を賠償する義務を負うべきである。 そして、右義務は、訴外B会社の営業に関して生じたものというべきところ、被告Y2会社が訴外B会社の第三者に対する営業上の債務を引受けたことは当事者間に争いがないから、被告Y2会社は、民法四一五条に基づき、原告に生じた損害を賠償すべき責任があることになる。 |