ID番号 | : | 06769 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | コック食品事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 弁当調理補助作業に従事していたパートタイマーの洗浄機による負傷につき、使用者に安全配慮義務違反があり、また休業特別支給金及び障害特別支給金は損害賠償から控除できないとした原審の判断を認容した事例。 |
参照法条 | : | 労働者災害補償保険法23条1項 労働者災害補償保険特別支給金支給規則1条 労働者災害補償保険特別支給金支給規則2条 労働基準法84条2項 民法415条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 労災保険と損害賠償 |
裁判年月日 | : | 1996年2月23日 |
裁判所名 | : | 最高二小 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成6年 (オ) 992 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 民集50巻2号249頁/時報1560号91頁/タイムズ904号57頁/労働判例695号13頁/裁判所時報1166号2頁 |
審級関係 | : | 控訴審/06719/大阪高/平 6. 1.28/平成5年(ネ)71号 |
評釈論文 | : | 遠藤一治・NBL637号68~70頁1998年3月15日/岩村正彦・ジュリスト1109号131~133頁1997年4月1日/山下郁夫・ジュリスト1092号70~71頁1996年6月15日/山下郁夫・法曹時報50巻4号105~121頁1998年4月/森田修・法学協会雑誌114巻8号968~983頁1997年8月/森田修・法学協会雑誌114巻9号1085~1107頁1997年9月/西村健一郎・私法判例リマークス〔14〕<1997〔上〕>60~63頁1997年3月/川口美貴・平成8年度重要判例解説〔ジュリスト臨 |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-労災保険と損害賠償〕 労働者災害補償保険法(以下「法」という。)による保険給付は、使用者の労働基準法上の災害補償義務を政府が労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)によって保険給付の形式で行うものであり、業務災害又は通勤災害による労働者の損害をてん補する性質を有するから、保険給付の原因となる事故が使用者の行為によって生じた場合につき、政府が保険給付をしたときは、労働基準法八四条二項の類推適用により、使用者はその給付の価額の限度で労働者に対する損害賠償の責めを免れると解され(最高裁昭和五〇年(オ)第六二一号同五二年一〇月二五日第三小法廷判決・民集三一巻六号八三六頁参照)、使用者の損害賠償義務の履行と年金給付との調整に関する規定(法六四条、平成二年法律第四〇号による改正前の法六七条)も設けられている。また、保険給付の原因となる事故が第三者の行為によって生じた場合につき、政府が保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者の第三者に対する損害賠償請求権を取得し、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府はその価額の限度で保険給付をしないことができる旨定められている(法一二条の四)。他方、政府は、労災保険により、被災労働者に対し、休業特別支給金、障害特別支給金等の特別支給金を支給する(労働者災害補償保険特別支給金支給規則(昭和四九年労働省令第三〇号))が、右特別支給金の支給は、労働福祉事業の一環として、被災労働者の療養生活の援護等によりその福祉の増進を図るために行われるものであり(平成七年法律第三五号による改正前の法二三条一項二号、同規則一条)、使用者又は第三者の損害賠償義務の履行と特別支給金の支給との関係について、保険給付の場合における前記各規定と同趣旨の定めはない。このような保険給付と特別支給金との差異を考慮すると、特別支給金が被災労働者の損害をてん補する性質を有するということはできず、したがって、被災労働者が労災保険から受領した特別支給金をその損害額から控除することはできないというべきである。 以上によれば、被上告人が労災保険から受領した休業特別支給金及び障害特別支給金をその損害額から控除すべきでないとした原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は、独自の見解に立って原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕 その余の上告理由について 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原審の裁量に属する慰謝料額の算定の不当をいうものにすぎず、採用することができない。 |