ID番号 | : | 06784 |
事件名 | : | 雇用関係存在確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | ジョイフル事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | スーパー等に派遣され、催事販売に従事していた労働者の勤務態度不良を理由とする解雇につき、解雇権の濫用ともいえないとして有効とした事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法1条3項 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度 解雇(民事) / 解雇権の濫用 |
裁判年月日 | : | 1996年3月25日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成5年 (ワ) 19804 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報1598号15頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕 〔解雇-解雇権の濫用〕 原告は、平成五年二月二六日から同年三月三日までの間、Aスーパー志村坂上店の一階正面入り口前で催事販売に従事した。ところで、被告会社の前記販売マニュアルでは、入店の心得として、従業員通用口から入店し、受付において入店手続を行い、入店許可のバッジ(販売員証)を借り受けて必ずこれを左胸につけること、喫煙は定められた場所以外では絶対にしてはならないこととされており、販売員のエチケットとして、腕組みをしたりポケットに手を入れたり、後ろ手に組んだり不体裁な姿勢をとらないこと、カセットレコーダーの設置について、場内全体に聞こえるように設置することなどが明記されている。また、前記経営計画書では、入退店について、入店証(販売員証)を左胸につけて入店すること、接客マナーとして、腕組みをしたり、手をポケットに入れたり、後ろ手に組まないこと、販売態勢について、絶対に無断で売場を離れないこと、無気力な態度で店の信頼を失うようなことのないように注意することなどが明記されている。ところが、原告は、右催事販売の期間、レジの所に段ボール箱を置いてそこに腰をかけて腕組みをしたり、勤務時間中、レジの所に置いた電気ストーブに当たりながら喫煙したり、缶コーヒーを飲んだり、新聞を読んだりし、また、同店と被告会社との契約では宣伝用のエンドレステープを流すことが決められていたにもかかわらず、原告は、これをせず、テープを流すためのカセットレコーダーでラジオを聴いていた。さらに、原告は、入店後、アルバイトの者にレジを任せたまま一時間ほど売場を離れていた。Aスーパー住居余暇事業部に所属するBは、同年三月三日午後二時三〇分ころ、取引先管理業務の一環としてAスーパー志村坂上店を巡回して原告の勤務状況をチェックしたところ、原告が、着用しているジャンパーに入店許可の販売員証をつけず、段ボールに腰をかけて腕組みをしてラジオを聴いているのを現認した。そのため、Bは、同日、被告会社に対し、そのことを電話で連絡するとともに、原告に注意するよう要請し、翌四日にはAスーパーの取引先会議に出席した被告会社代表者に対し、「こんなことをやっていると、とんでもないことになりますよ」と言って、厳重に注意をした。 (六) このように、原告が被告会社で催事販売に関する研修を受け、被告会社代表者から二度にわたり注意を受けたにもかかわらず、Aスーパー志村坂上店で右のような勤務態度をとり、そのため同社から注意を受けたことから、被告会社代表者は、原告が販売員として適格性を欠いており、今後原告を販売員として取引先の売場に派遣すれば、スーパーなどの取引先から取引を停止される危険性があると判断し、また、販売員以外に原告にさせる仕事もないため、原告を解雇するのもやむを得ないとの結論に達した。 2 右事実によると、原告は、取引先との契約に反してハンドちらしの準備を怠り、その結果、売上げを減少させ、また、取引先との契約に反して陳列台を販売時間終了前に片付け、さらに、勤務時間中にストーブに当たり、腰を下してラジオを聴くなどし、そのため、取引先から被告会社に対して厳重な注意がなされたのであって、原告の就業状況は、著しく不良で就業に適しないといわざるを得ず、したがって、就業規則四九条二号に該当するといわなければならない。 6 原告は、本件解雇が他の懲戒処分を経ずになされた点で解雇権の濫用に当たると主張している。 しかし、証拠(略)によると、催事はスーパー等の店舗の催しとして行われ、被告会社の名前が表面に出ることはないこと、被告会社は独立の店舗を持たず、スーパーなどの売場を借りて販売員を派遣して販売する形態をとっていること、したがって、販売員の販売態度等がスーパーなどの契約内容に副わない場合などには直ちに取引を停止されるおそれがあり、取引先との契約書においてもそのような場合契約を解除し得る旨が明記されていること、以上の事実が認められる。これらのことや、被告会社が原告に対して二度にわたり注意したにもかかわらず、Aスーパー志村坂上店で前記行為に及んだことなどにかんがみると、本件解雇が解雇権の濫用ということもできない。 |