ID番号 | : | 06786 |
事件名 | : | 慰謝料等請求控訴、同附帯控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 四日市北郵便局事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 郵便局の管理職が職員の組合ビラ配布の中止を命じたこと、給与の口座振込みについて利用しない意思を表示している者に対して給与振込みをするように求め、威圧的な言辞を浴びせ嫌がらせを行ったこと、国際ボランティア貯金への加入の強要、嫌がらせをしたこと等を理由に、組合員たる職員が国に対して国家賠償法に基づく損害賠償を請求した事例。 |
参照法条 | : | 国家賠償法1条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償 |
裁判年月日 | : | 1996年3月26日 |
裁判所名 | : | 名古屋高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成7年 (ネ) 503 平成7年 (ネ) 482 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例695号86頁 |
審級関係 | : | 一審/津地四日市支/平 7. 5.19/不明 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕 郵政事業特別会計規程(一〇条二項)により、職員は官服を勤務外に着用して私事を弁じてはならないとされているから、勤務時間外に庁舎外でビラを配布する際に官服を着用した場合には、右規程違反に該当するものと認められる。したがって、これに対し管理者らが注意・指導を行うこと自体は当然のことであるが、そのことから直ちに不相当な態様での注意・指導の違法性が阻却されるということはできず、結局、本件のビラ配布が勤務時間に接着した時間帯に行われていることをもさらに参酌すれば、管理者らの本件の各行為は、管理者らが官服の着用に対して注意・指導する必要があったという点を考慮しても、なお相当性の範囲を逸脱したものとの評価を免れない。〔中略〕 控訴人は、被控訴人らは従来から管理者らの注意・指導に反発し、無視する態度をとり続けてきており、さらに本件のビラ配布中にも管理者らに暴言を吐き、あるいはことさら無視するなどして挑発した結果、管理者らが指導・注意するに当たり多少穏当でない言動に至ったものであるから、そのような相関関係の中で管理者らの言動を評価すれば、その言動は違法性を欠くと主張する。 しかして、(証拠・人証略)によれば、被控訴人らは、遅くとも本件より前の昭和六三年ころから勤務態度等について管理者らからしばしば注意や指導を受けていたが、これに直ちに従わないことが多く、管理者らは被控訴人らが反抗的、挑発的で一層の指導が必要であると判断していたこと、本件の各ビラ配布の際にも、被控訴人らの対応には反抗的、挑発的と評する余地があり、一方では管理者らの言動も、被控訴人らの対応に触発された面があることが認められる。 しかるところ、このような従来の被控訴人らの勤務態度等は、管理者らが本件各言動をするに至った背景事情ないし動機として斟酌するのが相当であるが、管理者らの本件の各言動の内容、程度に照らすと、この点は管理者らの各言動の違法性を阻却するまでの事情とは解されない。また、本件の各ビラ配布の際の被控訴人らの対応に反抗的、挑発的と評しうる点があることについても、管理者らが、被控訴人らの不当な言動については処分権を背景にしてこれを禁圧する態勢で、本件の不当な各言動に及んでいるという点を割り引いて考えるのが公平である。しかるときは、その際のそうした点を割り引いた上での被控訴人らの対応と、一方では管理者らの言動が被控訴人らの対応に触発された面があることを考慮しても、なお管理者らの前記各言動は不当なものといわざるを得ない。 |