全 情 報

ID番号 06803
事件名 退職金等請求事件
いわゆる事件名 東京ゼネラル事件
争点
事案概要  自己都合で退職した労働者が退職金の支払、被告持株会社に対する精算金の支払を求めて争った事例。
参照法条 労働基準法11条
労働基準法3章
労働基準法89条1項3の2
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 懲戒等の際の支給制限
賃金(民事) / 退職金 / 遅延損害金の利率
裁判年月日 1996年4月26日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成6年 (ワ) 24498 
裁判結果 認容,一部棄却
出典 労働判例697号57頁/労経速報1614号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-退職金-懲戒等の際の支給制限〕
 被告における退職金の性格について検討する。(証拠略)によれば、退職年金規約一七条二項は、退職一時金の給付額は、勤続期間に応じ、退職時の基準給与に別表2(略、以下同じ)に定める給付率を乗じた額とするとして、支給条件を一義的で明確に定めていることから、退職金の支給は使用者の義務とする趣旨であると解されること及び前記認定のとおり、給与規程三二条及び退職年金規約三三条には、従業員が懲戒解雇された場合における退職金の支給制限規定が置かれていることからすれば、被告における退職金は基本的に賃金の性格を有し、付随的に功労報償的性格をも併せ有しているものと解される。
 そして、被告会社における退職金の性格が以上のとおりで、退職年金規程等に右のような退職金不支給規定が置かれている会社において、従業員につき自己都合退職後に在職中懲戒解雇事由が存在していたことが判明した場合においては、右懲戒解雇相当事由が当該従業員の永年の勤続の功を抹殺してしまうほどの重大な背信行為である場合には、当該退職者が退職金請求権を行使することは、権利濫用として許されなくなると解するのが相当である。〔中略〕
 原告の本件書面の作成及び約束は、商品取引法九四条二号及び受託契約準則二二条三号には反せず、したがって、会員従業員に対する規則一二条にも該当しないこととなるので、原告は就業規則四一条一一号の懲戒解雇事由に該当しないこととなる。〔中略〕
 3 以上からすれば、原告の被告会社に対する退職金請求権の発生及び行使を阻止する理由はいずれも認められない。そして、就業規則及びこれと一体をなす退職年金規約に基づいて原告の勤続年数に応じた退職金を算定すると四三八万六〇〇〇円となることについては、当事者間に争いがない。
〔賃金-退職金-遅延損害金の利率〕
 右退職金に対する遅延損害金については、被告会社の給与規程(〈証拠略〉)三一条には、「従業員が満三年以上勤務し、次の各号の一に該当する退職をした時は退職に関する一切の手続を完了後一か月以内に支給する。」との規定が置かれているが、右の「各号の一に該当する」こと及び「退職に関する一切の手続」の完了の有無及びその時期についての主張、立証がなされていないので、労働基準法に基づき、これを判断することとする。被告会社における退職金の基本的性格が賃金と認められることは前記認定のとおりであり、賃金については、労働基準法二三条一項により、労働者の退職の場合、権利者の請求から七日以内に支払うべきものとされているところ、(証拠略)によれば、原告は、平成六年四月一三日、被告会社常務取締役営業本部長宛ての内容証明郵便を差し出すことにより被告会社に対し退職金の支払を請求したこと及び右内容証明郵便は同月一四日に送達先に到達したことが認められるので、被告会社はそれから七日を経過した翌日である同月二二日から遅滞を生ずることとなる。
 以上により、原告が被告会社に対し、四三八万六〇〇〇円及びこれに対する平成六年四月二二日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員の支払を求める部分については理由があり、その余は理由がない。
〔賃金-退職金-懲戒等の際の支給制限〕
 原告の被告持株会に対する精算金支払請求について
 原告が被告持株会に対し、七四万二七三〇円の限度で精算金支払請求権を有することは当事者間に争いがない。
 また、被告持株会の原告に対する右支払債務は、弁済期の定めのない債務と認められるところ、(証拠略)によれば、原告は平成六年四月一三日、被告持株会理事長宛ての内容証明郵便を差し出すことにより、被告持株会に対し精算金の支払を請求したことが認められ、右内容証明郵便は同月一四日に送達先に到達したことが認められるので、被告持株会はこの時から遅滞を生ずることとなる。