ID番号 | : | 06810 |
事件名 | : | 損害賠償等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | ジェー・イー・エス事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 無断欠勤・遅刻・早退を理由とする解雇につき、解雇はいささか一方的に過ぎるとして、解雇権濫用により無効とした事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法1条3項 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度 解雇(民事) / 解雇権の濫用 |
裁判年月日 | : | 1996年5月27日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成5年 (ワ) 16638 |
裁判結果 | : | 一部認容,一部棄却 |
出典 | : | 労経速報1614号9頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕 〔解雇-解雇権の濫用〕 2 本件解雇の有効性(賃金請求権の有無)について 以上認定したところによると、原告は、被告に雇用された平成三年四月八日から本件解雇に至るまでの間、無断欠勤が一〇日間、遅刻が一九回(このうち一分の遅刻が八回、二分の遅刻が五回、三分と五分の遅刻が各一回、一時間四三分と四時間五六分の遅刻が各一回であり、無断早退が二回(五分と七分とが各一回)であるというのである。 ところで、証拠(書証略、原告の供述)によると、次の事実を認めることができる。 原告の担当業務は前記認定したとおりであるが、この業務の性格上対人関係が多いことから、相手方の都合に合わせて行動しなければならない関係上、厳格に勤務時間どおりに勤務しさえすれば済むというのではなく、出勤時間以前に、あるいは退社時間以後に、場合によっては休日にも勤務に従事しなければならないということが往々にしてあり、このようなことから被告の従業員に対する勤務時間管理も厳格に運用されていたわけではなく、原告に関しても同様であって、原告は被告に雇用されていた間に被告から勤務時間について注意を受けたこともなかった。 ところで、ポール・キナーは、平成三年九月に被告を退職し、この後任事務は坪井が引継いだが、この引継ぎに当たり原告とポール・キナーとの前記特別休暇に関する合意は引き継がれなかったので、坪井はこの合意の存在を知らなかった。このようなことから、坪井は、原告からの休暇申請に対してこの理由を尋ねることもしないで、専ら被告の都合のみによって承認しなかったのであり、とりわけ、五月の連休期間の休暇申請に対しては休暇申請書の受取り自体をも拒絶したほどであった。 以上に認定したところによると、原告が坪井の承認を得ることなく原告の都合のみで休暇を取得したことは責められるべきところであるが、本件紛争のそもそもの原因はポール・キナーが原告との右休暇に関する合意事項を引き継がなかったために坪井がこの存在を知らずに被告の都合によってのみ原告からの休暇申請を一方的に拒絶したという対応の拙劣さにその一端があったということも否定できず、無断欠勤に関して原告のみを一方的に非難することは片手落ちの誹りを免れないであろう。 以上の諸点を考慮すると、本件解雇は些か一方的に過ぎ、解雇権を濫用したものとしてその有効性を認めることはできない。 |