ID番号 | : | 06814 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 自交総連東豊観光労働組合事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 二つの労働組合が併存するバス会社で会社が組合間差別を行ったとして、一方組合から損害賠償を請求された事例。 |
参照法条 | : | 民法709条 労働組合法7条3号 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償 |
裁判年月日 | : | 1996年6月5日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成5年 (ワ) 5998 |
裁判結果 | : | 一部認容(控訴) |
出典 | : | タイムズ928号114頁/労働判例700号30頁/労経速報1612号3頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 島岡大雄・平成9年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊978〕312~313頁1998年9月 |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕 1 前記判示のとおり、被告の原告X1の定年解雇、原告組合の組合員に対する脱退工作及び組合加入妨害、本件配転命令、本件担当車両変更及びその後の業務内容における差別、自宅待機処分等、団体交渉拒否及び不誠実な団体交渉、組合旗及び組合事務所の備品の撤去、平成二、三年度の夏季、冬季一時金、平成三年度の定期昇給及び一斉休暇闘争を理由とする賃金カット、原告X2に対する配置転換、出勤停止処分や賃金カットは、いずれも原告組合に対する不当労働行為に該当するというべきである。 ところで、労働組合は、労働者の労働条件の維持、向上等の目的のもとに結成された団体であって、使用者と対等の交渉当事者として労働者の経済的地位の向上のために活動することが保障されている(労組法一条一項、二条)ばかりでなく、使用者による支配、介入は、労働組合の自主性を損なうものとして堅く禁止されている(同法七条三項)。かような法の趣旨に照らせば、被告が行ったように、労働組合が特定の上部団体に加盟したことを理由とし、所属組合員に不利益を課することは、ひいては労働組合に対する支配、介入行為となり、法律上許されないというべきである。このような意味において、労働組合は、使用者から支配、介入を受けないという法律上の利益を有するといえるのであり、被告の右各行為は、原告組合の右法律上の利益を侵害するものである。 そして、被告の右各行為は、原告組合が自交総連に加盟したときから、A社長らの偏見に基づき、原告組合を敵視して行われた一連の行為で、その期間も長期に及び、態様も執拗かつ悪質というべきである上、原告組合の主張を是認した救済命令や仮処分がなされたにもかかわらず、これを尊重し、遵守することもなかったとの事情を総合すると、社会的相当性の見地からも著しく逸脱し、強度の違法性があるというべきであるから、単に原告組合に対する不当労働行為とされるだけでなく、原告組合に対する不法行為を構成するというべきである。〔中略〕 被告が行った行為のうち、本件担当車両変更及びその後の業務内容における差別、平成二、三年度の夏季、冬季一時金の減額、街頭宣伝活動を理由とする自宅待機処分、平成三年の定期昇給(ただし、前記原告組合の組合員以外の従業員の昇給率を上回った原告らの分を除く)、平成四年六月の有給休暇を付与しなかった行為及び原告X2に対する整備課への配転命令、出勤停止処分は、いずれも原告組合に対する不当労働行為に該当するが、それとともに、その対象とされた原告らとの関係においても、経済的不利益を与え、多大の精神的負担を被らせているのであるから、同時に不法行為を構成するというべきである。〔中略〕 (一) 原告らは、平成二年三月一六日の担当車両変更によって、それまで従事していた観光業務に就くことができなくなり、また、同年一一月六日以降の担当車両に戻された後も、主に送迎業務を担当させられ、観光業務に従事する回数が減少したのである。通常観光業務は、宿泊を伴い、遠距離となることが多いため多額の各種手当ての支給を受けられる上、乗客や土産物店からの寸志、紹介料の支払いが受けられるなど収入面での利点がある。そして、原告らは、観光業務をはずされ、あるいはこれに就く回数を減らされたために、これらの収入を受けられなくなり、その機会を減少させられてしまったのであるから、右各種手当て、寸志、及び紹介料の減少分が原告らの損害に当たるというべきである。〔中略〕 前記認定の事実によれば、原告組合及び原告らは、被告による前記不法行為により、多大の精神的損害(原告組合においては無形損害)を被ったことは容易に推測され、被告は、原告らに対する右損害に対する慰謝料等の支払業務を負うというべきである。もっとも、前記のとおり、被告に対する不法行為を理由とした損害賠償請求権には、既に消滅時効が完成した分(平成二年六月二九日までに生じた分)もあるが、被告の行った不法行為の性質や態様、全原告に与えた打撃、継続期間等本件に顕れた一切の事情に鑑みれば、原告組合に対する慰謝料は、二〇〇万円、原告らに対する慰謝料額は、原告X2に対しては三〇万円、その余の原告らに対しては各二〇万円が相当である。 |