全 情 報

ID番号 06843
事件名 雇用関係存在確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 アール・エフ・ラジオ事件
争点
事案概要  就業規則に定められた五五歳定年制につき、公序良俗に反し、あるいは権利濫用、信義則違反には該当しないとした事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条2項
民法1条3項
民法90条
高年齢者の雇用の安定等に関する法律4条
体系項目 退職 / 定年・再雇用
裁判年月日 1996年8月26日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 平成6年 (ネ) 4076 
裁判結果 却下,一部棄却
出典 労働民例集47巻4号378頁/労働判例701号12頁
審級関係 一審/06306/東京地/平 6. 9.29/平成2年(ワ)7623号
評釈論文 松本光一郎・平成10年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊1005〕319頁1999年9月
判決理由 〔退職-定年・再雇用〕
 以上の諸事情に照らして考えると、高齢化社会に進展したわが国において、雇用慣行の長所を生かしながら、高年齢者の雇用を確保し、その経験や能力を活用していくことにより活力ある社会を維持していくことは、事業主に課せられた重要な社会的要請であり、六〇歳定年制は事業主の負う基本的な社会的責務であるというべきであるが、このような社会的責務は事業主の経営、雇用管理上の条件整備を労働者の協力も得て進めることにより達成することが可能となるのであるから、産業社会においてこれが普及して普遍化した段階にあっては、特段の事情のない限り、右社会的責務を履行せずにこれを達成しないことは社会通念上違法・無効であるというべきである。しかしながら、本件にあっては、本件五五歳定年制が社会通念上違法・無効なものであるかどうかについての判断の基準時点は、本件五五歳定年制が原告に適用されることが現実化した時点、すなわち原告が満五五歳に達した平成二年二月二八日の時点をもって相当するところ、この時点において、六〇歳定年制が既に放送業界を含む産業社会で主流となっていたということがいえるものの、五五歳定年制が維持されたままの企業も多く存在し、必ずしも六〇歳定年制が普遍化した状況にあったものとはいいがたいのであって、本件五五歳定年制をもって、これを違法・無効とするまでの客観的法規範が形成されていたと認めることは困難である。被告会社は、平成二年二月当時、高年齢者雇用安定法に定める努力義務を十分に尽くさず、原告を含め定年後も就業の意欲と能力を有する退職者を組合員・非組合員の区別なく可能な限り再雇用すべき配慮に欠けていたが、本件五五歳定年制が平成二年二月二八日の時点における客観的法規範に反するとはいえず、しかも、当時は被告会社において六〇歳定年制を直ちに実現することが容易であったとすることができない以上、右個別的事情があるからといって、本件五五歳定年制が公序良俗に反し、あるいは権利濫用、信義則違反に該当するということはできないというべきである。