ID番号 | : | 06858 |
事件名 | : | 公務外認定処分取消請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 地方公務員災害補償基金福岡県支部長事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 小学校の給食調理師が熱風消毒器による感電に伴い全身倦怠について公務上災害の認定を受け、その後狭心症も右感電を原因とするとして追加認定請求したケースにつき、公務起因性を否定した事例。 |
参照法条 | : | 地方公務員災害補償法45条1項 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 脳・心疾患等 |
裁判年月日 | : | 1996年9月26日 |
裁判所名 | : | 福岡高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成5年 (行コ) 24 |
裁判結果 | : | 原判決取消,請求棄却(上告) |
出典 | : | タイムズ942号134頁/労働判例712号69頁 |
審級関係 | : | 一審/06346/福岡地/平 5. 9.14/平成3年(行ウ)12号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-脳・心疾患等〕 二 争点2について 被控訴人の疾病が冠れん縮性狭心症であるとの証明がなされた場合を仮定し、その発症と本件事故との間に因果関係(条件関係)を認めることができるか否かについて検討を加えておく。 1 証拠(乙第一八号証の一、原審証人A及び当審証人Bの各証言)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 (一) 冠状動脈が易スパスム性を獲得して冠れん縮性狭心症が発症する機序については定説がなく、比較的有力な説として、次のものがある。すなわち、冠状動脈壁には、血管平滑筋や自律神経(血管運動神経)終末等が血圧や血流量を生理的に維持するために合目的に配列され、血管の緊張を保っているが、加齢あるいは何らかの後天的原因によって、平滑筋繊維の走行の乱れや断裂、あるいは自律神経終末の配列の乱れ等を呈するようになる。その結果、右の生理的血管緊張に不均一をもたらし、これが反復する求心性の刺激となって自律神経系に極めて不安定な状態(易スパスム性)を形成し、血管緊張度を変えるような内因性・外因性の刺激に対して敏感に反応し自然発生的にスパスムを起こすことになる。 (二) 電撃ショックが冠れん縮性狭心症を発症させるか否かについて、臨床例の報告はなく、これが論じられた医学文献もない。 2 右の発症機序に関する説明に従うと、電撃ショックが易スパスム性獲得の後天的原因であるとの科学的・医学的確証が得られれば、冠れん縮性狭心症の発症と本件事故との間に条件関係を認めることができるのであるが、いまだ、これを認める医学上の知見は存在しない。また、前記のとおり、被控訴人は本件事故の約三週間後に胸部圧迫感を訴えているのであるが、易スパスム性の獲得は加齢あるいは何らかの後天的原因といった種々の原因によって引き起こされるのであるから、胸部圧迫感出現の前に本件事故があったというだけでは、右の条件関係につき高度の蓋然性の証明があったとすることはできない。C医師は、原審証人尋問及び甲第二六号証の一、第二八、第三三号証において、電撃ショックが被控訴人の身体に大きなストレスを加え、これにより被控訴人に冠れん縮性狭心症を発症させたと述べるが、これには何らの科学的・医学的説明も加えられておらず、直ちには採用できない。そして、他に右の条件関係を認めるに足りる証拠はない。 |