全 情 報

ID番号 06864
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 共立メンテナンス事件
争点
事案概要  夫婦で寮の管理人をやっていた者が寮の管理業務につき時間外労働、深夜労働、休日労働がなされたとして、時間外割増賃金等を請求した事例。
参照法条 労働基準法32条
労働基準法37条1項,3項
労働基準法40条
労働基準法41条3号
労働基準法施行規則25条の2
体系項目 賃金(民事) / 割増賃金 / 支払い義務
裁判年月日 1996年10月2日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成6年 (ワ) 12731 
裁判結果 一部認容(控訴)
出典 タイムズ937号153頁/労働判例706号45頁/労経速報1620号3頁
審級関係
評釈論文 林豊・平成9年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊978〕284~285頁1998年9月
判決理由 〔賃金-割増賃金-支払い義務〕
 (1) 原告X1の就業規則上の始業時間は、午前六時である。そして、本件寮の開館時刻は午前六時三〇分であり、電話の交換業務の開始時刻は午前七時とされていることに照らせば、原告X1は、就業規則に定められた始業時刻である午前六時以前になすべき特段の業務はなかったというべきである。そして、そのような業務命令を被告が発した形跡もないのであるから、仮に、原告X1の主張のように、原告X1が午前五時三〇分から就業していたとしても、これは、原告X1が、本来行う必要のない時間帯に自発的に労働を行ったにすぎず、右労働に対する時間外労働手当を請求することは許されないというべきである。〔中略〕
 原告X1の休日勤務についてであるが、前記のとおり、被告は、原告らに対し、休日においても、原告ら又はパートタイマーのいずれか一人は在寮するよう命じていたのであるが、右指示は、その趣旨からすると、ただ単に寮にいればよいというものではなく、休日に、本件寮において、何らかの突発的な事態が生じた場合に備え、これに対処させることが目的であったというべきである。そうすると、右指示は、本件寮における労務の提供(業務)を要する場合が生じ得ることを前提として、原告らやパートタイマーに待機を命じたものの、すなわち、休日における業務を命じたものといわなければならない。
 確かに、本件寮において、休日に業務を行わなければならない事態がそれほど頻繁に生じたとは考え難いが、仮に、そのような事態が生じなかったとしても、原告らは、それに備えて、本件寮で待機することを余儀なくされ、その間場所的制約を受け、本件寮を離れられなかったのである。さらに、特段の業務の指示を受けていなかったとしても、その行動には自ずから制約を受けていたというべきであるから、原告らは、休日においても、業務を命じられていたとするのが相当である。
 ところで、原告X1の休日における労働時間であるが、休日には特段の定められた業務がなかったこと、休日の在寮者に期待されていたのは、日常生じる事態への対処が中心であったと推測されることなどの事情に鑑みれば、そのような事態の発生が予想される午前九時以降午後五時までの八時間から原告X1が自認する昼食時間三〇分及び午後四時から一時間の休憩時間を控除した六時間三〇分とするのが相当である。〔中略〕
 原告X2の休日労働についてであるが、原告X1について述べたとおり、休日の在寮については、その実態が休日労働であったというべきであるから、原告X2が休日に本件寮の留守番をした日については、休日労働があったものというべきである。〔中略〕
 右判示のとおり、平日において、原告X1は午前六時から午後一一時まで、原告X2は午前六時から午後一〇時までの各時間帯、本件寮において業務に当たっていたというべきである。そして、その間の休憩時間について、原告X1は二時間三〇分、原告X2は一時間を自認しているのであるから、原告X1の勤務時間は一四時間三〇分、原告X2の勤務時間は九時間(原告X2の主張のうちで労働時間と認定された午前六時から一〇時まで、午前一一時から、一一時三〇分まで及び午後四時三〇分から一〇時までの合計から右自認にかかる一時間の休憩時間を控除した時間数)ということになる。そして、原告X1については、そのうちの午後一〇時から一一時までの一時間は、深夜労働に該当するというべきである。〔中略〕
 以上述べてきたところをまとめると、原告X1の平日一日の労働時間は、一四時間三〇分であり、そのうちの一時間は深夜労働である。そして、一週間につき、四四時間を超えた部分である三七時間(深夜労働時間を除いた時間)については、時間外労働となり、それぞれ所定の手当の支給を受ける権利を有する。
 また、原告X1の休日の労働時間は、六時間三〇分であり(ただし、深夜労働に該当する部分はない。)、この労働の対価は支払われていないのであるから、原告X1は、被告に対し、休日に在寮した日につき、一日当たり六時間三〇分の休日労働手当の支給を受ける権利を有するというべきである。
 2 原告X2の平日一日の労働時間は、九時間であり(ただし、深夜労働に該当する部分はない。)、一週間につき、四四時間を超えた部分である一〇時間については、時間外労働となり、所定の時間外手当の支給を受ける権利を有する。
 また、原告X2が休日に在寮した分は、休日労働に該当するが、その対価は、留守番手当として支払いずみであるから、原告X2が被告に対して請求できるのは、右時間外手当だけである。