ID番号 | : | 06868 |
事件名 | : | 遺族補償給付等不支給処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 三田労働基準監督署長(ニュー・オリエント・エキスプレス)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 出向先会社の年末休日中にくも膜下出血で死亡した銀行員につき、基礎疾患、危険因子(飲酒、喫煙等)の存否、業務状況等により、出向先会社における業務遂行が過重負荷となり、それが自然経過を超えて基礎疾患を著しく増悪させたとは認められないとして、業務起因性を否定した事例。 |
参照法条 | : | 労働者災害補償保険法7条 労働者災害補償保険法12条の8 労働基準法79条 労働基準法80条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 脳・心疾患等 |
裁判年月日 | : | 1996年10月24日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成4年 (行ウ) 193 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | タイムズ940号187頁/労働判例710号42頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 小西國友・ジュリスト1134号127~131頁1998年6月1日 |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-脳・心疾患等〕 5 業務起因性について 右に検討してきたところを総合考慮すれば、Aは、業種の異なる慣れない職場での業務や残業、特に昭和五七年一二月には、会社の決算時期を迎え、一〇月、一一月に比して一日当たりの残業時間が長いうえ、海外研修旅行後休む間もなく就労し、二五日は半日出勤にもかかわらず午後八時まで就労していたこと、さらには、片道二時間以上という遠距離通勤の事情などから、ある程度の疲労がたまり、ストレスが生じていたであろうことは推認するに難くない。しかしながら、Aの会社における業務は、銀行と比較して勤務時間に大差がなく、担当職務も業種が銀行と旅行代理店という違いがあるものの、ともに総務と総称される内容で異質であるとまではいえないこと、銀行から会社へ出向してすでに七か月が経過していること、海外研修旅行後である一二月一一日、一二日、一九日及び二六日の休日はいずれも消化しており、蓄積された疲労が解消されないで慢性疲労状態にあり、過度のストレスが生じていたとみることも困難であることに加え、遅くとも昭和五〇年以降高血圧症という基礎疾患に罹患し、降圧剤の服用中断に伴うリバウンド効果もみられたこと、高血圧及び肥満による塩分制限、減量を指摘されながらこれを試みた形跡は窺えず、会社では喫煙、飲酒をしていたなど自らの健康管理を怠っていた面があったことなどに照らせば、Aに生じた脳動脈瘤は、高血圧症という基礎疾患に加えてリバウンド効果、肥満、喫煙、飲酒、さらには疲労やストレスが共働原因となって徐々に増悪して脆弱化していたところ、年末休暇中である一二月三〇日の午前七時ころという冷気下に排便をしたために、急激な血圧が脆弱化していた脳動脈瘤に加わって破裂してくも膜下出血を来たし、結局死に至ったとみるのが相当であり、Aの会社における業務遂行が過重負荷となり、それが自然経過を超えて基礎疾患を著しく増悪させたとは到底認められない。したがって、Aの業務と死亡との間に相当因果関係があると認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。 |