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ID番号 06869
事件名 解雇無効確認等請求事件
いわゆる事件名 フューチャーズ・フットボール・クラブ事件
争点
事案概要  プロサッカー選手としての契約が成立しているか否かにつき、一連の契約手続により、成立に至っているとした事例。
 プロサッカー選手の契約解除につき、当事者の契約書に記載された解約事由に当たらないとした事例。
参照法条 労働基準法9条
労働基準法2章
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / スポーツ選手
解雇(民事) / 解雇の自由
裁判年月日 1996年10月25日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成6年 (ワ) 15856 
裁判結果 認容(控訴)
出典 労働判例704号91頁
審級関係
評釈論文 小西康之・ジュリスト1126号348~350頁1998年1月1日/川井圭司・同志社法学49巻1号216~230頁1997年5月
判決理由 〔労基法の基本原則-労働者-スポーツ選手〕
 2 以上の事実関係によれば、Aクラブは、平成五年一二月二九日から、平成六年一月五日までの前記電話連絡、本件通知書送付、前記契約書の呈示及びその説明等の原告に対する一連の言動により、遅くとも右〔5〕のやり取りがあった時点には、本件通知書及び本件契約書記載の待遇等で原告がAクラブにおいてプロサッカー選手として活動する旨の選手契約の申込みを原告に対してなし、これに対して、原告が同月一一日に本件契約書をBに交付して右選手契約の締結を承諾したことにより、原告とAクラブの間において右選手契約が成立したと認めるのが相当である。〔中略〕
〔解雇-解雇の自由〕
 二 Aクラブの原告に対する本件選手契約解除の有効性について
 1 (証拠略)及び原告本人尋問の結果によれば、原告は、平成六年二月八日、Bから、練習についていけないようであるとの理由により、本件選手契約を解除する旨の意思表示を受けたことが認められる。
 2 本件選手契約解除の有効性について検討するに、(証拠略)によれば、本件契約書一〇条一項には、次の規定が存することが認められる。
 一〇条 〔クラブによる契約解除〕
 一項 次の各号のいずれかに該当する事実があった場合、クラブは、選手に対し書面(配達証明付内容証明郵便による。以下同じ)で通知することにより、本契約を直ちに解除することができる。
 (1) 選手が本契約の定めに違反した場合において、クラブが改善の催告をしたにもかかわらず、これを拒絶または無視したとき
 (2) 選手が疾病または傷害によりサッカー選手としての技能を永久的に喪失したとき
 右規定は、契約解除原因になりうる事由を列挙することにより、契約選手に対し警告を与えるとともに、列挙された事由以外の原因では、契約解除されないことを保障して、契約選手の身分の安定をはかり、かつ契約解除をする場合においても、配達証明付内容証明郵便による通知によることとして、手続的明確性を要求した規定であると解される。そうすると、クラブ側から選手契約を解除できる原因事由は同項記載の事由に限定されると解するのが相当である。
 3 そこで原告につき同項該当事由の存否につき検討するに、本件全証拠をみても、原告に右解除事由が存したことを認めるに足りる証拠はなく、また、(証拠・人証略)によれば、原告は、本件契約解除に関し、配達証明書(ママ)付内容証明郵便による通知を受けていないことが認められる。
 以上からすれば、被告による本件契約解除は、無効であると言う外はない。