全 情 報

ID番号 06871
事件名 賞与請求事件
いわゆる事件名 カツデン事件
争点
事案概要  退職した労働者が、賞与対象期間は勤務しており賞与の全額が支払われるべきであり、賞与の支給日在職制度は労働基準法一条に反して無効であるとして争った事例。
参照法条 労働基準法11条
労働基準法3章
労働基準法1条
体系項目 賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 支給日在籍制度
裁判年月日 1996年10月29日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成8年 (ワ) 6744 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1639号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賞与・ボーナス・一時金-支給日在籍制度〕
 被告の給与規程には、「賞与は、社員の勤務成績と会社の目標成果達成に貢献する度合いを勘案して、支給する」(第二二条一項)、「賞与、その他臨時に手当を支給する場合の金額および支給方法は、その都度定める」(同条三項)、「賞与は、会社の営業成績により支給を停止することがある」(同条五項)、「支給対象期間中に欠勤、または不就業の場合は、勤務成績と業績貢献度を主とし、これに出勤期間の長短を総合のうえ賞与額を査定する」(第二三条)と定められている。これによれば、被告において賞与は、従業員の勤務成績と会社の業績に基づいて、支給するかどうか、支給するとして各従業員に対する支給額がその都度決定されるものであることが認められ、この点において、支給対象期間勤務することによって当然に発生する月例賃金とは性質を異にするといわざるを得ない。したがって、原告が本件賞与の支給対象期間である平成六年一一月二一日から平成七年五月二〇日までの期間勤務したからといって、当然に支給されるものと解することはできない。
 賞与の受給資格者につき支給日現在在籍していることを要するとするいわゆる支給日在籍要件は、受給資格者を明確な基準で確定する必要から定められるものであり、十分合理性はあると認められる(因みに、一般職の職員の給与等に関する法律第一九条の四、同条の五によれば、一般職の国家公務員に支給される期末手当及び勤勉手当についても、基準日ないし基準日前一か月以内に在職することを要件としている)。原告は、支給対象期間勤務しているにもかかわらず支給されないのは不合理である旨主張するが、賞与の前記性質及び支給日在籍要件も給与規程に明記されていることからすれば、支給対象期間経過後支給日の前日までに退職した者に不測の損害を与えるものとはいえないし、支給日在籍者と不在籍者との間に不当な差別を設けるものということもできない。したがって、支給日在籍要件を定める就業規則等の規定は労働基準法一条の趣旨等に反して無効であるとする原告の主張は採用し難い。