ID番号 | : | 06877 |
事件名 | : | 処分無効確認等請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | JR東日本(高崎西部分会)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | JR東日本の職員である国労の分会所属の組合員が助役に団体交渉を求めた際に事務室内への無断で立ち入り、退去通告に従わなかったことを理由に会社が参加組合員に対し、訓告、厳重注意の措置をとったことにつき、右組合員らが右措置の無効確認と損害賠償を求めていたケースの差戻審の事例。 |
参照法条 | : | 民法709条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償 |
裁判年月日 | : | 1996年11月19日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成8年 (ネ) 1824 |
裁判結果 | : | 棄却(確定) |
出典 | : | 労働判例709号53頁 |
審級関係 | : | 上告審/06649/最高一小/平 8. 3.28/平成4年(オ)1011号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕 当時の状況から客観的に判断すると、本件行為参加者についての両助役の認識の正確性には吟味の余地があり、事実誤認の恐れがあったことの否定できないことは、両助役の供述を内容とする前記証拠について説示したところが同様に妥当するものというべきである。ところが、控訴人(具体的には高崎運行部長)は、このように正確性に疑問のある両助役の報告のみに基づいて、他に被控訴人から事情を聴取する等の必要な調査をすることなく本件措置を決定したものである。 したがって、当時、控訴人高崎運行部長において、被控訴人が本件行為に参加したものと判断したことに相当の理由があったものと認めることはできないものというべきである。〔中略〕 控訴人に対してされた本件措置のような厳重注意の措置は、就業規則等に規定がなく、それ自体としては直接的な法律効果を生じさせるものではないが、実際上、懲戒処分や訓告に至らない更に軽微な措置として、将来を戒めるために書面をもって発令されているものであり、人事管理台帳及び社員管理台帳に記載されるものであることを認めることができる。 そうすると、右厳重注意の措置は、企業秩序の維持、回復を目的とする指導監督上の措置と考えられるが、一種の制裁的行為であって、これを受けた者の職場における信用評価を低下させ、名誉感情を害するものとして、その者の法的利益を侵害する性質の行為であると解される。したがって、当該措置を執ったことを相当とすべき根拠事実の存在が証明されるか、又は控訴人において右の事実があると判断したことに相当の理由があると認められない限り、その者に対する不法行為が成立するものと解するのが相当である。 そして、以上に説示したところによれば、被控訴人が本件行為に参加したことについては証明がなく、また、控訴人において、被控訴人が本件行為に参加したものと判断したことに相当の理由があったものと認めることはできないものであるから、被控訴人に対する不法行為が成立するものというべきである。 |