ID番号 | : | 06935 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 佐川ワールドエクスプレス事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 従業員から取締役に就任していた者が、取締役退任後、嘱託扱いとされたのは理由のない解雇であるとして、雇用契約上の地位確認を求めて争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法9条 労働基準法2章 民法623条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 取締役・監査役 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 嘱託 |
裁判年月日 | : | 1997年3月28日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成7年 (ワ) 10513 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例717号37頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 山川隆一・ジュリスト1127号138~140頁1998年2月1日 |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-労働者-取締役・監査役〕 原告は、取締役に就任した後も、引き続き大阪支店長としての地位を兼ね、従前と同様の業務執行にも携わっていたことが認められる。しかしながら、〔1〕取締役に就任した後は、東京の案件も含め、稟議の決済に関与するようになったこと、〔2〕原告は、少なくともAが代表取締役に就任するまでは、他の二名の取締役とともに、被告の重要事項について協議していたこと、〔3〕原告については、その業績が評価され、Bの後任の代表取締役の候補にも挙がっていたこと、〔4〕取締役に就任後は、給与(報酬)の支給方法が変わり、その全額が会計上取締役の報酬として処理されていたこと、〔5〕取締役就任後は、タイムカードによる勤務時間の管理を受けなくなり、有給休暇も存在しなくなったことに鑑みれば、原告が単なる名目上の取締役であったとは考えられないし、また原告が、被告と使用従属関係のもとで労務に従事していたとも判断できず、むしろ業務担当取締役として職務を執行していたと見るのが自然であって、いまだ被告と原告との間に新たな雇用契約が成立したとは認められないというべきである。〔中略〕 (5) 原告は、被告がC会社グループの下位に位置する会社であって、その経営方針等はすべて親会社が決定しており、被告の取締役が経営に参画する余地がなかった旨主張し、証拠(〈証拠・人証略〉)及び弁論の全趣旨によれば、本店の移転、海外支店の設営等被告の経営の根幹に関わる事項が、事実上親会社であるC会社の意向によって決定されていたことが窺われる。しかしながら、グループ企業の子会社においては、事実上その親会社の意向が経営に強く反映され、これに反する経営方針を取ることができないことは普通に見られることであり、これにより子会社の取締役の権限が事実上制限されることはあるとしても、このことから、原告が被告の従業員として取り扱われていたことが推認されるものではない。 (三) 以上総合するに、原被告間の労働契約の成立の立証はいまだされていないというほかはない。 〔労基法の基本原則-労働者-嘱託〕 原告は、平成七年四月に原告、被告間において、嘱託として雇用する旨の雇用契約が締結された旨主張するので検討する。 証拠(〈証拠・人証略〉、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、平成七年四月一日付けで、原告を嘱託とし、大阪支店西日本営業部関空営業所長に任ずる旨の辞令を発したこと、原告がこれに対して異議を述べ、Dを通じてAと交渉したが、条件等の面で折り合いがつかなかったこと、原告は、同月一七日付けの原告代理人名の内容証明郵便において、嘱託を命ずることが無効であり、原告を正社員として処遇するよう求めたこと、これに対し、被告は、同月二四日付けの被告代理人名の内容証明郵便において、嘱託契約締結協議を打ち切ること及び今後原告、被告間に何らの関係が存在しない旨通知したことがそれぞれ認められる。そして、以上の事実によれば、原告、被告間においては、原告が拒絶したことにより、嘱託を内容とする雇用契約が締結されるには至らなかったことが明らかであるから、原告の主張は理由がない。 |