全 情 報

ID番号 06938
事件名 地位保全等仮処分申立事件
いわゆる事件名 学校法人池田学園事件
争点
事案概要  生徒数の減少を理由としてなされたコンピューター情報処理専門学校の一年間の期限付き常勤講師の雇止めの効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法19条
労働基準法14条
民法628条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1997年3月31日
裁判所名 大阪地岸和田支
裁判形式 決定
事件番号 平成8年 (ヨ) 109 
裁判結果 認容,一部却下
出典 労働判例718号40頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 本件学校のように生徒数確保に不安定要因が大きい私立学校にあっては、生徒数変動に応じて教員数を調整する必要性が高いということができ、その調整手段として期限付き雇用の講師を多用し、期間の更新を拒絶する方法を採ることもやむを得ないこととしなければならないが、債権者の場合は、再採用の経緯や期間の定め方に特異性があり、加えて担当職務が専任教員に勝るとも劣らぬ重責であった事情を考慮すると、期間の定めのない専任教員と同等の扱いはできないとしても、通常の常勤講師よりも格段に、雇用期間の更新に対する期待が保護されるべき地位にあったといわねばならないから、その期間の更新を拒否するには、解雇に準じた相当な理由を要し、これを欠く更新拒否は権利の濫用となり、従前と同一条件で雇用が更新されたものとするのが相当である。〔中略〕
 X1は債務者からの要請があればいつでも退職するという態度であったのに、債務者は希望退職者を募らず、継続雇用を求めていた常勤講師を雇い止めにしたこと、以上の事実が疎明される。
 右事実によれば、債権者を雇い止めにしてX1を残した結果の教科担当の割り振りは、教員の教科専門性を全く軽視したものになっているのであり、コンピューター専門学校を標榜する本件学校にとっては、生徒に対する教科教育の点において、数学、理科、自動車を担当する債権者を残す必要性が、X1を残す必要性に勝っていたと言うべきである。〔中略〕
 したがって、債務者が債権者に対して、平成八年七月一日から一年間の期間更新を拒否した行為は、解雇権の濫用に準じる行為であって、前と同一条件で雇用が更新されたものというべきである。