ID番号 | : | 06941 |
事件名 | : | 賃金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 大道運輸事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | タンクローリー車の運転手の就労につき、使用者が就労させない言動をとっているときは、配車係の指示があれば直ちに業務に従事できる状態で運転手控室に待機することで、労務の提供をしたということができる、とした事例。 本件においては、バッチャーストライキ(事実上業務の遂行を不能とさせるストライキ)は実施されていないとして、賃金請求権の発生を認めた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法24条1項 民法493条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 一部スト・部分ストと賃金請求権 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 債務の本旨にしたがった労務の提供 |
裁判年月日 | : | 1997年4月18日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成7年 (ワ) 10781 |
裁判結果 | : | 認容(確定) |
出典 | : | 労働判例726号127頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-賃金請求権の発生-債務の本旨にしたがった労務の提供〕 二 争点1(一)について 前記一認定事実によれば、被告が、原告らに業務命令を発する方法としては、運転手控室に運転手毎に出荷地である油槽所名、納入先、品名、数量を記載した配車表を貼り、これに従って、原告らが、それぞれの油槽所に赴き、ガソリン等を積み込み、運送する運用となっていたところ、被告代表者は、平成七年八月一一日、被告事務員に対して、原告ら連帯労組組合員については、配車表になにも記入しないよう指示し、被告は、翌一二日から、運転手名のみを記載し、出荷地、納入先、品名、数量欄を記載しない配車表を掲示し、同月一四日以降は、配車表を貼ることもしなくなったのであって、出荷地である油槽所が明らかでない上に、被告において、原告らを就労させない意図であることは明白であるから、このような場合、原告らにおいては、油槽所に行く意味がなく、配車係の指示があれば直ちに業務に従事できる状態で運転手控室に待機することで、労務の提供をしたということができる。 〔賃金-賃金請求権の発生-一部スト・部分ストと賃金請求権〕 三 争点1(二)について 1 いわゆるバッチャー下ストライキの有無について 被告は、A労組が、平成七年八月一一日以降、明確なストライキの外観がないが、事実上、被告の業務遂行を不能にさせるいわゆるバッチャー下ストを行った旨主張する。 確かに、A労組が、かつて、いわゆるバッチャー下ストライキを行ったことは、当裁判所に顕著な事実である。 しかしながら、本件においては、外形的には業務妨害を窺わせるものが認められず、平成七年八月一一日、宣伝車に乗ったA労組組合員ら十数名が参集した被告の尼崎事業所にあるのは事務所と駐車場に過ぎず、事実上被告の業務遂行を妨害するのは困難であること(〈証拠略〉)、油槽所にA労組組合員が赴いたことを認めるに足る証拠はなく、油槽所には十数個の給油口があるため、事実上、給油を妨害するのは困難であること(〈証拠略〉)、同日、原告Xは事前に休暇を取っており、他の原告三名は配車表に従って通常の業務に従事し、被告の他の車両及び被告と敷地を共用しているB運送とC会社の車両も通常の業務を行い、被告の業務活動に何ら支障をきたしていないにもかかわらず、同日既に被告代表者は、原告らに対する翌一二日の配車を止めていること、翌一二日以降、業務妨害を窺わせる活動があったことを認めることができないことに照らすと、右原告(ママ)の主張は、採用できない。 2 ストライキ通告の有無について 被告は、A労組が、平成七年八月一一日、被告に対し、口頭でストライキを通告した旨主張し、被告代表者の供述はこれに沿う。 しかし、前記一認定のとおり、平成七年八月一一日、被告は通常に業務を遂行しており、ストライキを窺わせる行動がないこと、(証拠・人証略)、原告X及び被告代表者本人によれば、同年九月一日の被告代表者とA労組との会談において、A労組が業務再開を求めたのに対し、被告代表者は、A労組がストライキをしている旨回答し、ストライキである根拠として連帯旗と、宣伝車の存在を挙げたが、A労組がストライキを通告したことは根拠として述べておらず、被告代表者の供述には変遷があると認められること、並びに、ストライキ通告を否定する(証拠・人証略)及び原告Xに照らして、右被告代表者の供述はにわかに信用することができない。 他に、被告が、原告の労務を(ママ)提供を受領しなかったことを、正当化する根拠は窺われない。 以上によれば、A労組はストライキを行っておらず、被告は正当な理由がなく、原告らの労務提供の受領を拒否したのであるから、原告らは賃金請求権を失わないものと認められる。 |