ID番号 | : | 06956 |
事件名 | : | 差額賃金等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 安田生命保険事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 賃金に関する就業規則の不利益変更につき、合理性があるとし、労働者の労働契約の内容もそれにより変更され、差額賃金の支給は認められないとした事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 労働基準法93条 |
体系項目 | : | 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 賃金・賞与 |
裁判年月日 | : | 1997年6月12日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成1年 (ワ) 15773 |
裁判結果 | : | 棄却(確定) |
出典 | : | 労働判例720号31頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 菊池高志・法律時報70巻4号115~118頁1998年4月/大内伸哉・民商法雑誌118巻2号99~108頁1998年5月 |
判決理由 | : | 〔就業規則-就業規則の一方的不利益変更-賃金・賞与〕 六 本件就業規則の変更等の適否 1 不利益の存在如何 本件就業規則の変更等による不利益性について検討する。 原告らは、原告ら組合員の成績(販売・集金等の実績)を昭和六二年協定にあてはめ、各賃金費目ごとに賃金額を算出し、これを現実に支給された賃金と対比したのが、別表新旧比較表である旨主張するが、原告ら組合員の成績については、主張立証がないのであるから、原告ら主張の不利益性の点を認めることはできない。 もっとも、原告Xについては、別表新旧比較表の限度で争いはないので、これについてみるに、同原告については、昭和六二年労働協約によって算出された賃金額より、昭和六三年就業規則及び平成元年就業規則により現実に支給された賃金額は少ないから、不利益が生じたといえる。 なお、原告らは、集金関係給与規程の改訂のみを捉えて、原告ら組合員に不利益が生じたとも主張しているようであるが、仮に現実の支給額が増加するような変更が行われていれば、労働強化が行われているなどの特段の事情のない限り、不利益が生じたものとはいえないのであるから、制度の改定のみを捉えて不利益性を主張する原告らの主張は理由がない。 2 必要性 そこで、本件就業規則の変更等の必要性について検討するに、この点については、前記のとおり、行政指導・スタンスの変化、販売環境の変化、販売基盤の変化及び営業職員の高資質・高能率化が存したのであるから、これらの諸点に鑑みれば、その必要性を肯認できる。 原告らは、新契約の契約額、保有契約の件数と契約額を問題としたり、あるいは、被告の経営状況は極めて好調であったので必要性は存しなかった旨主張するが、被告に変更の必要性が存したことは右に述べたとおりであり、負債超過等による経営危機を打開する等の事情により実施されたのではないから、被告の経営状況の好不調のみを理由とする原告らの右主張は理由がない。 なお、原告らは、保障性商品の占率につき、一時払養老保険の爆発的ブームが去ることによって、平成元年には五〇パーセント台を回復しているとして、本件就業規則の変更等が不要であったと主張するかのようであるが、平成元年は、まさに本件就業規則の変更等が行われた後のことであって、単なるブームが去ることにより占率が下がったとする原告らの主張を裏付けるに足る証拠はない。 3 合理性 さらに、本件就業規則の変更等の合理性について検討するに、前記のとおり、営業職員の給与は昭和六三年度末で、勤続二年以上の者を対象とする同一人ベースによると昭和六三年度の年収と昭和六二年度の年収対比で約一〇パーセント伸展し、七三・六パーセントの営業職員が増収となるなど、営業職員の賃金が全体として従前より減少しているとはいえず、また、労働条件が低下しているともいえないし、被告は、営業職員の大部分を組織するA労組と協議・合意のうえ、前記のとおりの理由に基づき、営業職員の利益に配慮したのであるから、これらの事情に鑑みれば、本件就業規則の変更等については、その合理性を肯認することができる。 |