全 情 報

ID番号 06971
事件名 地位保全及び金員仮払い仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 重光事件
争点
事案概要  会社取締役の解任に反対し、従業員に対して申入書に署名するように求めた総務部長等が、会社の経営権、人事権に関する従業員としての度を過ぎた介入行為であるとして解雇され、その効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 業務妨害
裁判年月日 1997年7月30日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 決定
事件番号 平成8年 (ヨ) 1090 
裁判結果 却下
出典 労働判例724号25頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-業務妨害〕
 労働者は自己の労働条件を守るため、あるいは社会的公正の見地から、経営者の経営意欲、経営能力、経営方針に信頼をおけないときには、これらについて批判し、その改善を求め、あるいは経営担当者には誰がふさわしいかなどの点について意見を表明することも許されると解するのが相当であるが、その批判や意見表明は、企業秩序、経営秩序に反する社会的相当性を欠く行為であってはならないことはもちろんである。
 債権者三名の前記一5に認定の行為は、同(1)、(2)に認定のとおり就業時間中に行われた例もあるものであって、その態様において社会的相当性を欠くものである。また、本件申入書はAには提出されていないのであるから、署名を集めた目的が、AにBの取締役解任について再考を促すものであったとは考えにくく、他の目的で行われたのではないかという疑念を払拭できず、その目的においても社会的相当性を欠くものではないかとの疑問が残るものである。
 したがって、債権者三名の前記一5に認定の行為は、企業秩序、経営秩序に反する社会的相当性を欠く行為であり、就業規則一〇条一項四号に該当するというべきである。〔中略〕
 2 前記二1(1)ないし(6)に認定のとおり、債権者三名は平成八年六月から同年九月までの間に、企業秩序、経営秩序に反する社会的相当性を欠く行為であり、就業規則一〇条一項四号に該当する行為を繰り返し行っていること、債権者三名はいずれも債務者の幹部職員であったこと、債権者三名が右のような行為を行ったのはAの経営意欲、経営能力、経営方針に対する不信感に基づくものであったこと(この点は前記一8に認定した債権者三名の陳述書の記載内容から明らかである。)からすれば、本件解雇が解雇権の濫用であって無効であるとはいえず、本件解雇は有効である。