ID番号 | : | 06973 |
事件名 | : | 賃金等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | ほるぷ事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 書籍の販売訪問を主たる業務とする会社の支店の販売主任及びプロモーター社員が、労働基準法上の管理監督者あるいは事業場外みなし労働時間制の適用者として時間外手当及び休日手当が支払われないのは不当であるとして、時間外手当及び休日手当の請求を行った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法38条の2 労働基準法41条2号 |
体系項目 | : | 労働時間(民事) / 事業場外労働 労働時間(民事) / 労働時間・休憩・休日の適用除外 / 管理監督者 |
裁判年月日 | : | 1997年8月1日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成5年 (ワ) 20931 |
裁判結果 | : | 一部認容,一部棄却(確定) |
出典 | : | 労働民例集48巻4号312頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 松岡二郎・労働判例725号6~14頁1997年12月15日/松尾嘉倫・平成10年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊1005〕334~335頁1999年9月 |
判決理由 | : | 〔労働時間-労働時間・休憩・休日の適用除外-管理監督者〕 労基法四一条二号にいう管理監督者とは、労基法が規制する労働時間、休憩、休日等の枠を超えて活動することが当然とされる程度に、企業経営上重要な職務と責任を有し、現実の勤務形態もその規制になじまないような立場にある者を言い、その判断にあたっては、経営方針の決定に参画し、あるいは労務管理上の指揮権限を有する等経営者と一体的な立場にあり、出退勤について厳格な規制を受けずに自己の勤務時間について自由裁量を有する地位にあるか否か等を具体的勤務実態に即して検討すべきものである。 これを本件についてみるに、前記一2で認定のとおり、原告X1は、資格四級で(経営方針に則り管理者としての自覚と旺盛な意欲をもって業務向上に貢献しうること等が右資格要件として定められている)、過去に営業所長を経験して足切り措置なく販売報奨金の支給を受け、東京南支店では支店長が常駐していなかったために、売上集計や支店内会議の資料の作成等を行い、朝礼において支店長からの指示事項を伝え、首都圏地区支店長会議に出席することもあり、新入社員のタイムカードに確認印を押していたことが認められる。しかしながら、前記一2で認定のとおり、原告X1は、タイムカードにより厳格な勤怠管理を受けており、自己の勤務時間について自由裁量を有していなかった。また、前記一2で認定のとおり、東京南支店のA課長、B課長及びC主任らのタイムカードの確認印はそれぞれ各人が押印しており、原告X1が勤怠管理を行っていたものではないこと、原告X1が売上集計や支店長不在時の会議の取りまとめ、支店長会議への出席あるいは朝礼時に支店長からの指示事項を伝えることはあっても、支店営業方針を決定する権限や、具体的な支店の販売計画等に関して独自にB課長及びA課長に対して指揮命令を行う権限をもっていたと認めるに足りる証拠はないことから、原告X1が被告の経営方針の決定に参画する立場になかったことはもちろん、労務管理上の指揮権限を有する等経営者と一体的な立場にあったものとも認められない。 〔労働時間-事業場外労働〕 労基法三八条の二は、事業場外で業務に従事した場合に労働時間を算定し難いときは所定労働時間労働したものとみなす旨を規定しているところ、本来使用者には労働時間の把握算定義務があるが、事業場の外で労働する場合にはその労働の特殊性から、すべての場合について、このような義務を認めることは困難を強いる結果になることから、みなし規定による労働時間の算定が規定されているものである。したがって、本条の規定の適用を受けるのは労働時間の算定が困難な場合に限られるところ、本件における展覧会での展示販売は、前記二2で認定のとおり、業務に従事する場所及び時間が限定されており、被告の支店長等も業務場所に赴いているうえ、会場内での勤務は顧客への対応以外の時間も顧客の来訪に備えて待機しているもので休憩時間とは認められないこと等から、被告がプロモーター社員らの労働時間を算定することが困難な場合とは到底言うことができず、労基法三八条の二の事業場外みなし労働時間制の適用を受ける場合でないことは明らかである(したがって、就業規則三二条二項但書のプロモーター社員について、事業場外での業務について、通常の労働時間勤務したものとみなす旨の規定は、労働時間の算定が困難な場合に限っての規定と限定して解釈する限りにおいて有効と認められる)。なお、被告はプロモーター社員が展覧会での展示販売へ参加するか否かは自由であり、また展示販売の時間中は自由に利用できる休憩時間を増やし、労働時間を増やすことのないように指導していると主張するが、展示販売は被告の業務として行われているものであるし、プロモーター社員が展示販売業務に従事しているか否かを把握して労働時間を算定することは、右のとおり本来容易に出来ることであるから、この点に関する被告の主張は理由がない。 4 したがって、原告X2及び同X3には事業場外みなし労働時間制の適用により、展覧会における展示販売の場合の所定時間外労働は発生しない旨の被告の主張は理由がない。 |