ID番号 | : | 06977 |
事件名 | : | 未払賃金請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 函館信用金庫事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 完全週休二日制に伴う賃金単価を抑えるためにした平日の所定労働時間を二五分延長する就業規則の変更につき、その必要性に乏しく、合理性は認められないとして、原判決を取り消した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条 労働基準法93条 |
体系項目 | : | 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 配転・出向・転籍規定 |
裁判年月日 | : | 1997年9月4日 |
裁判所名 | : | 札幌高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成7年 (ネ) 13 |
裁判結果 | : | 原判決取消,認容(上告) |
出典 | : | 労働民例集48巻4号362頁 |
審級関係 | : | 一審/06723/函館地/平 6.12.22/平成1年(ワ)208号 |
評釈論文 | : | 吉田肇・民商法雑誌117巻6号114~124頁1998年3月/佐藤博文・労働法律旬報1421号22~27頁1997年12月10日/大内伸哉・ジュリスト1136号121~124頁1998年6月15日/鶴崎新一郎・法政研究〔九州大学〕65巻2号345~357頁1998年10月/片田信宏・平成10年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊1005〕328~329頁1999年9月/本久洋一・労働法律旬報1423・1424号79~85頁1998年1月25日 |
判決理由 | : | 〔就業規則-就業規則の一方的不利益変更-配転・出向・転籍規定〕 被控訴人の経営状況は芳しいものではなかったところ、被控訴人が、労働時間の短縮に協力し、完全週休二日制を実現した場合、経営が立ち行かなくなるかどうかについて、綿密な検討をした形跡はないこと(甲二三)、被控訴人が、第二、第三土休に関しては、格別就業規則の手当てをしていないこと、被控訴人は、新たに休日となる土曜日の勤務時間を平日に割り振り、これによって延長された時間を勤務時間とすると、その分だけ時間外勤務手当の支給を免れることから、基本的に右の方法によることにしたものであること、及び既に説示したところによれば、完全週休二日制を実現した場合のコスト面でのマイナス効果は、極めて少なかったとみざるを得ないことからして、被控訴人は、銀行の週休二日制の実施を好機として、時間外勤務手当を削減し、実質的には賃金の切り下げともいえる方法でコストダウンを図ったものと認めざるを得ないのである。 以上のとおり、本件変更は、その必要性に乏しく、しかも、控訴人らにとって重要な勤務時間及び賃金に関するの既得の権利を一方的に奪うものといってもよいものであるのに、被控訴人は、当時、被控訴人の職場の絶対多数組合であった組合の意見を聴いて真摯に協議し、尊重すべき意見があれば尊重するという姿勢には程遠い態度に終始し、実質的には組合の意見を聴かないまま新就業規則を実施するに至ったものと評価することができるのであって、冒頭に説示したような意味における合理性があったものと認めることはできない。なお、本件変更後間もなく、組合から大量の脱退者が生じたが、前記四の事実によれば、その主たる原因は、被控訴人による組合に対する支配介入にあるものと推認される。 |