ID番号 | : | 06982 |
事件名 | : | 賃金請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | メデューム事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 土地販売契約及び不動産仲介業者である会社の営業社員が、その仲介行為によって土地売買等について成約したとして、未払の歩合給を請求した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法11条 労働基準法3章 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 賃金請求権の発生時期・根拠 |
裁判年月日 | : | 1997年10月16日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成9年 (ネ) 1558 |
裁判結果 | : | 棄却(上告) |
出典 | : | 労働判例726号63頁 |
審級関係 | : | 一審/06930/東京地/平 9. 3.25/平成8年(ワ)1288号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-賃金請求権の発生-賃金請求権の発生時期〕 1 原判決挙示の証拠によると、原判決認定の事実を認めることができる。この事実によれば、原判決にいう本件甲の契約(A株式会社を売主・建物建築請負人とし、B・Cを買主・注文主とする土地売買契約及び建物請負契約)及び本件乙の契約(D株式会社を売主・建物建築請負人とし、E・Fを買主・注文主とする土地売買契約及び建物請負契約)は、いずれも控訴人の営業社員としての被控訴人の仲介行為によって成約するに至ったものというべきである。 2 控訴人は、被控訴人は、上司の監督のもとにその補助として顧客と接したことがあるにとどまり、各契約は、専ら被控訴人の上司の力によって成約をみたものであって、被控訴人の行為によるものではないとの趣旨を主張するが、前記の認定事実に照らし、採用することができない(入社後間もない被控訴人に対し、上司が種々援助を与えたであろうことは推測に難くないが、そのような事実があるからといって、前記各契約が被控訴人の仲介行為によって成約をみたものと認定することの妨げとはならない。)。 3 また、控訴人は、控訴人においては、営業社員に対し、住宅分譲(土地売買契約と建物請負契約)に関する勧誘及び契約締結のみならず、履行完了に至るまでの一連の業務に担当として一貫して従事させる責任体制を採っており、担当社員は、業務完了後、顧客からの土地の仲介手数料及び建築請負業者からの建物紹介料が現実に入金されたことを自ら確認の上、内部的に報告をしてはじめて歩合給の支給要件を充たすのであって、このことは社内通達の規定によっても明らかであると主張する。 しかし、本件甲及び乙の契約書によると、控訴人が仲介人の立場を超えてその主張するような事項についてまで履行の責任を負うべきことが契約内容となっていることを窺うことはできない。また、控訴人の営業社員に対する歩合給は、文書(〈証拠略〉)上、右の仲介行為の対価として入金される手数料の金額を基準として定められている。そうであるとすると、その仲介行為によって契約を成約させた営業社員に対する歩合給の支給要件は、原判決が説示するとおり、仲介手数料が入金されること及び当該支払対象契約の停止条件が解除されることに尽きるものというほかはない(〈証拠略〉)。なるほど、手数料が円滑に入金されるようにするためには、控訴人としては、その主張するような場合の顧客との対応に様々配慮をするであろうことは理解できる。しかし、前記契約の性質上、担当社員がこれらの配慮までしなければ歩合給支給の要件を満たさないということには無理があるものというべきである。 なお、控訴人の社内通達(〈証拠略〉)には、営業社員が仲介行為によって契約を成立させた場合には、成約時に契約伝票を作成すること、手数料の入金があったときには入金伝票を作成し、上司の捺印を受けて業務部に提出すること、更に、歩合給計算書を作成し、上司の捺印を得た上で業務部に提出することが定められているが(原判決四頁九行目67頁1段17行目)から同五頁四行目まで参照。)、自らの仲介行為により首尾よく成約を果たした営業社員に対し、その後退職したからといって歩合給を支払わないでよいとすることに合理的な根拠を見出すことはできないから、これらの定めは、当該社員が在職している通常の場合の歩合給支給の手続を定めたものとみるべきであって、当該社員が成約後退職した場合には歩合給を支給しないとの内容を表現するものとみることはできない。 よって、控訴人の主張は採用できない。 |