ID番号 | : | 06988 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | パソナ事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 派遣労働者による派遣先会社における現金領得行為につき、現金取扱い業務が労働者派遣基本契約に基づく業務内容であること等により、損害賠償に関する派遣元会社の使用者責任が認められた事例。 |
参照法条 | : | 民法709条 民法715条 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働義務の内容 配転・出向・転籍・派遣 / 配転・出向・転籍・派遣と争訟 |
裁判年月日 | : | 1996年6月24日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成7年 (ワ) 11249 |
裁判結果 | : | 認容(確定) |
出典 | : | 時報1601号125頁/タイムズ971号190頁/労経速報1688号3頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 野川忍・判例評論467〔判例時報1618〕207~211頁1998年1月1日 |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働業務の内容〕 〔配転・出向・転籍・派遣-配転・出向・転籍・派遣と争訟〕 1 争点〔1〕については、各種給付金の支給手続及び原告の調査結果、被告Yの派遣終了後の所在不明等に照らすと、被告Yによる本件領得の事実が認められる。 2 争点〔2〕については、社会保険手続に付随しての本件現金取扱い業務程度の現金業務は予測できること、本件契約締結に際しての原告側の派遣業務についての説明、本件契約書に現金業務の除外規定がないこと、原告への派遣労働者が本件現金取扱い業務を行なっても被告会社や派遣労働者から何らの申し出もなかったこと等に照らすと、本件契約に基づき被告Yが担当すべき仕事の範囲に現金業務が含まれていると解される。 3 争点〔3〕については、右のとおり被告Yの本件現金取扱い業務が本件契約に基づく業務内容であること、同人は、被告会社に雇用されて原告へ派遣され、同会社から給与の支払いを受けていたこと、同会社の派遣担当のAが定期的に原告を訪れ、被告Yの仕事振りを見て監督していたこと、実質的な派遣料(派遣料から同人への給与を控除した額で給与の約半額にも及ぶ)は、被告会社による派遣労働者の指導監督の対価の意味もあると考えられること、同会社は、原告から被告Yの住民票の提出の要請があったのに拒んだこと、本件契約第七条で損害補償を規定すること等からすると、同人の本件領得行為は、本件契約に基づく派遣業務としての被告会社の職務の執行につきなされたものと解される。 4 争点〔4〕については、以上認定し検討した結果及び左記5に照らすと、被告会社において、被告Yの選任及びその職務執行の監督について相当の注意を尽くしているとは到底言えない。 5 争点〔5〕については、前記認定事実によれば、被告Yの前記内訳書への転記が正確になされているかについて、同人の派遣先の上司であるB等の監視、確認がその都度厳格になされていれば、本件領得を未然に妨げた可能性が高いと考えられるけれども、他方、各種給付金は、社内従業員が支給の額や時期を予測できるものが多いため、領得された場合ほどなく苦情が出されることから(本件領得も受給該当者の苦情が発覚の端緒となった)一定の監視が及んでいると言えること、前記内訳書への記載も経理担当者が隣にいる机の上で作成されていること、過去において各種給付金の領得の事故はなかったこと、右事情において、故意に各種給付金を領得した被告Yに対する本件損害賠償請求につき原告の過失相殺を認めるのは相当でないところ、被告会社は、被告Yから住民票の提出も受けないで雇用して原告に派遣し、派遣後は右3のとおり被告Aを監督し派遣料を得ていたことに照らすと、被告会社に対する損害賠償請求につき原告の過失相殺を認めるのも相当でない。 6 争点〔6〕については、弁論の全趣旨によれば、原告が原告訴訟代理人に本訴の提起及び追行を委任したことが認められるところ、本訴提起の事情、訴訟追行の経過、認容額等に照らすと、本件領得と相当因果関係ある弁護士費用として原告の請求する金三〇万五〇〇〇円は相当である。 |