全 情 報

ID番号 06996
事件名 懲戒免職処分取消請求事件
いわゆる事件名 航空自衛隊中部航空方面隊事件
争点
事案概要  無断で所定の帰隊時刻後も帰隊せず、職務を離れるとともに、自衛官の制服を着用した上で、国家政策としての自衛隊の沖縄配置及び立川移駐を公然と非難しその政策の転換ないし中止を求める行為を行った自衛官が、自衛隊法四六条により懲戒免職とされ、それを違法として争った事例(請求棄却)。
参照法条 自衛隊法64条2項
自衛隊法64条3項
自衛隊法46条1号
自衛隊法46条3号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務妨害
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の限界
裁判年月日 1997年3月27日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (行ウ) 34 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 時報1610号132頁/訟務月報44巻6号950頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務妨害〕
 自衛隊法は国の公務運営上の諸利益を保護するために隊員に職務専念義務(同法六〇条)や職務遂行義務(同法五六条)等の一般服務上の義務等を課しているが、このほかに、さらに同法六四条を規定しているのは、国家公務員法等におけるこの種の規定と同様、隊員らが団体的集団的に義務懈怠行為を行うと、個別的な職務専念義務違反・職務命令違反の単なる集積とは異なり、国の業務の運営能率が阻害され、国民全体の共同利益をも害することから、これらの利益を保護するために、別個に禁止規定を置いたものと解される。
 そうすると、同条二項にいう「政府の活動能率を低下させる怠業的行為」とは、隊員による団体的集団的な義務懈怠行為であって政府の活動能率を低下させることをいうと解すべきである。そして、右にいう怠業的行為としては、隊員が、当該行為に出る認識を相互に有する通常のもののほか、当該隊員から他の隊員に、他の隊員からさらに他の隊員にというように連鎖的に意思を連絡するものや、当該隊員が中心となって順次他の隊員らと各個に結びつき、他の隊員相互間に認識のないもの、怠業的行為に出ない当該隊員が怠業的行為に出る他の隊員らと各個に結びつき、他の隊員相互の間に認識のないものなども、意図・目的を同じくして団体的集団的に義務懈怠行為が行われる以上、同項の趣旨に照らし、これに含まれるものと解される。〔中略〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務妨害〕
 自衛隊法六四条三項の「せん動」とは、国公法九八条二項、一一〇条一項一七号及び地公法三七条一項、六一条四号に各規定されている「あおり」と同様に、自衛隊法六四条二項に定める違法行為を実行させる目的をもって、他人に対し、その行為を実行する決意を生じさせるような、または既に生じている決意を助長させるような勢いのある刺激を与えることをいうものと解される。〔中略〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の限界〕
 原告Xの本件特別警備練成訓練参加拒否行為は、自己の独特の信念に基づいて自衛隊員として当然に従わなければならない上官の命令に反抗してこれに従わなかったのであって、重大な非違行為といわなければならず、また、本件チラシ貼付行為は、自己の独特の信念から自己の所属する自衛隊の存在そのものを全面的に否定する内容を有するチラシを自衛隊内の施設に貼付し、隊員の閲覧に供したのであって、これも重大な非違行為といわなければならない。
 以上の諸点を考慮すると、本件懲戒免職処分は、処分権者である被告航空自衛隊中部航空方面隊司令官の裁量権の範囲内によってなされたということができ、懲戒権者としての裁量を逸脱した点は認められない。