ID番号 | : | 06997 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 帝京科学大学事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 新設予定の大学の教授として、就任の時期を平成二年四月一日とする始期付き教員採用予定契約が締結されており、原告主張の第二次就任承諾書を提出した時点で労働契約が成立し、採用予定契約の撤回は不当な解除に当たるとして損害賠償が請求されたケースにつき、右始期に至るまでの原告の言動、非協力的態度、非常識な要求への固執等をみると、大学の教員としての不適格性が明らかであり、人事権の濫用に当たるものではなく、名誉毀損を含む何らかの不法行為が存したとは認められないとして、原告の請求が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 民法1条3項 民法709条 民法710条 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 採用内定 / 法的性質 労働契約(民事) / 採用内定 / 取消し |
裁判年月日 | : | 1997年3月28日 |
裁判所名 | : | 甲府地都留支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成3年 (ワ) 1 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報1636号12頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-採用内定-法的性質〕 〔労働契約-採用内定-取消し〕 一 事案の概要に記載の各事実は、当事者間に争いがない。 二 成立に争いがない(証拠略)によれば、被告大学の設立準備室の開設の事情及び大学新設のための手続等については、被告大学の主張1、2(一)ないし(三)記載の各事実が認められ、そして、原告が被告大学の教員就任予定者として決定され、その担当科目等も予定され被告大学は原告から第二次就任承諾書までの提出を受けたが、その後の状況の変化によりその担当科目変更の必要が生じたことから原告に対して第三次就任承諾書の提出を求めたが、その目的を果たせなかった経緯として、被告の主張3(一)ないし(七)に記載の各事実を認めることができる。 また、前掲各証拠によれば、被告大学においてはその設立準備の一環として、教員の研究に必要な研究設備、器具、図書等の購入の希望を聴取してその調整を図り、またその他の打合せのために、学科毎に学科会議の名称で会議を開催していたが、その会議における原告の言動等については、被告の主張4(一)ないし(三)に各記載の事実が、並びにその後の原告と被告大学との紛争の経緯等については被告の主張5(一)ないし(三)記載の各事実を認めることができる。 三 以上判示の事実関係によれば、原告と被告大学との間には、昭和六三年三月ころ、文部省の設立認可がおりて被告大学が設立されること、原告がその経歴、業績等から被告大学の専任教員に相応しいものと文部省から認められ、かつ、原告がNHKを退職すること、原告が被告大学の教授としての就業規則等の所定の勤務条件を承諾することを各停止条件とし、原告の就任の時期を平成二年四月一日とする始期付きの教員採用予定契約が締結されたものと認められる。 しかしその後の右始期に至るまでの期間において、原告の言動、なかんずく私立大学としての被告大学の運営ないし教育カリキュラムの編成等に対する正当な理由に基かない非協力な態度、及び同僚となるべき教員との融和を欠く態度、被告大学当局に対する給与関係事項及び設備等についての非常識な要求の固執等が存したことから、被告大学が当初知ることができなかった原告が被告大学の専任教員(教授)としての不適格性が明らかになったことを理由として、前記教員採用予定契約を撤回したものと認めることができ、被告大学の右措置は、已むを得ないものであったと判断される。 従って、これが被告大学の人事権の濫用に当たるものであるとは判断しえないし、前記判示のその経過において被告大学が原告に対する名誉毀損を含む何らかの不法行為が存したことも認められない。 四 よって、以上によればその余の点につき判断するまでもなく、原告の本件請求は理由がないのでこれをすべて棄却することとし、訴訟費用の負担については、民事訴訟法八九条に則って、主文のとおり判決する。 |