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ID番号 06999
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 株式会社島文ほか事件
争点
事案概要  工場敷地内で従業員が油圧ショベルを用いて金属性容器を持ち上げアームを旋回させたところ、回転半径内にいた他の従業員に衝突させ死亡させた事故で、遺族補償年金が損益相殺される範囲が争われた事例(当該遺族補償給付請求権が現実に履行された場合又はこれと同視できる程度にその履行が確実な範囲でのみ、損益相殺を肯定)。
参照法条 民法715条
労働者災害補償保険法7条1項1号
労働者災害補償保険法12条の8第1項4号
労働者災害補償保険法16条
労働者災害補償保険法12条の4第1項
体系項目 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 労災保険と損害賠償
裁判年月日 1997年4月15日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 平成7年 (ワ) 892 
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 交通民集30巻2号545頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-労災保険と損害賠償〕
 同法による遺族補償年金は、同法の定める保険給付の一つであり(同法七条一項一号、一二条の八第一項四号、一六条)、政府は、給付の原因である事故が第三者の行為によつて生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する(同法一二条の四第一項)。
 したがつて、同法による遺族補償年金は、死亡した労働者の損害の填補をも目的としているものと解され、原告Xの受ける給付を同人の受けるべき金額から控除する必要があり、その範囲は、当該遺族補償給付請求権が現実に履行された場合又はこれと同視し得る程度にその存続及び履行が確実であるということができる場合に限られると解される(最高裁昭和六三年(オ)第一七四九号平成五年三月二四日大法廷判決・民集四七巻四号三〇三九頁参照)。
 そして、同法一六条の四によると、遺族補償年金の受給者に婚姻あるいは死亡等の事由が発生した場合、遺族補償年金の受給権の喪失が予定されているのであるから、既に支給を受けることが確定した遺族補償年金については、現実に履行された場合と同視し得る程度にその存続が確実であるということができるけれども、支給を受けることがいまだ確定していない遺族補償年金については、右の程度にその存続が確実であるということはできない。