全 情 報

ID番号 07009
事件名 部屋明渡請求事件
いわゆる事件名 JR東日本事件
争点
事案概要  JR東日本の職員で独身寮に居住する者が利用規程の改定によって占有権原を失ったとして明け渡しが請求され、右請求が認められた事例。
参照法条 民法593条
民法597条
民法601条
体系項目 寄宿舎・社宅(民事) / 社宅の使用関係
裁判年月日 1997年5月27日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成7年 (ワ) 3428 
裁判結果 認容(控訴)
出典 タイムズ954号155頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔寄宿舎・社宅-社宅の使用関係〕
 被告は、原告から本件利用規程に基づき本件寮室の居住の指定を受け、その居住を開始した日である昭和六三年七月二七日、本件寮室について、本件利用規程に規律された特殊な契約関係に基づく利用権を取得したものというべきである。
 3(一) 被告は、本件寮室について、被告が賃借権を有し、これに基づき利用ができるものであると主張する。
 しかしながら、前記認定の事実、とりわけ、原告は、寮に居住する社員にこれを割り当てることによっていわゆる営業的利益を得るものではなく、専ら社員の福利、厚生の目的で寮を所有あるいは賃借し、その管理・運営を行っているものであること、そのため、寮の管理・運営費用の大部分は原告の醵出する福利厚生費により賄われていることから、寮居住者の支払うべき使用料等は、民間の一般施設等を利用する場合に比べて極めて低廉に設定されており、これを寮室の使用・収益の対価である賃料とは到底評価し得ないこと(なお、被告は、寮への居住と寮居住者の原告に対する労務の提供とは対価関係にあり、また、居住者の支払う寮の使用料に、寮室の居住者に対する現物給付性を併せると、これが寮室の賃料の性質を有するものとなると主張するけれども、寮居住者の原告に対する労務提供と寮への居住が直接の対価関係にあるものとは認められないから、被告の右主張を採用することはできない。)等からすると、原被告間に賃貸借契約関係があるとは到底認めることはできない。
 (二) また、被告は、本件寮室について、被告が使用借権又は同権利類似の権利を取得したものと主張する。
 しかしながら、前記認定のとおり、原告は、本件寮室等その所有あるいは賃借等する寮につき、本件利用規程を定め、これに基づき、全社的、一律に管理・運営しているものであるから、被告の本件寮室の使用権原は、本件利用規程に規律された特殊な契約関係に基づくものというべきである。仮に、右契約関係について、使用貸借契約ないし同契約類似の側面があったとしても、前記認定のとおり、本件においては、全く期間の定めがなかったわけではなく、被告が本件寮室に入居したときの本件利用規程において、寮に居住できる期間については、別に定めるところによるとされており、本件改定により右別段の定めがされたものであるから、被告はこれに従って本件寮室の明渡しをすべき義務があるものというべきであり、民法五九七条二項の準用をいう被告の主張は理由がない。