ID番号 | : | 07012 |
事件名 | : | 地位保全等仮処分命令申立事件 |
いわゆる事件名 | : | フットワークエクスプレス事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 加古川市に本店を置く運送会社の大津支店で集配業務に従事していた従業員が、和歌山市の阪和支店への配転を命じられ、六人家族である家庭の事情を理由に拒否したところ懲戒解雇され、右解雇を無効であるとして仮の地位の定めと賃金の仮払いを求めて仮処分を申し立てたケースで、申立てが一部認められた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反 |
裁判年月日 | : | 1997年7月10日 |
裁判所名 | : | 大津地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 平成9年 (ヨ) 45 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | タイムズ959号177頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕 債権者は関西ブロック社員として阪和を含む関西一円の異動対象者であったが、本件配転命令に違反したと一応認められる。 そこで、本件懲戒解雇が権利の濫用として無効であるか否かにつき検討するに、疎甲九、一一の1、前掲甲二三、三二及び債権者本人の審尋の結果によれば、債権者は、妻と高校生の子供二人、母及び実弟の六人暮らしで、大津市(略)に所有する自宅で六人全員が生活していること、妻は平成七年一月にくも膜下出血で倒れて、開頭手術を受けたことがあり、現在は病状をみながら三か月に一度定期的に通院しており、そのかたわら、パート勤務(月六万七〇〇〇円の収入)に出ているものの、気候の変化による頭痛、ストレス、精神不安による頭痛、身体の疲れによる頭痛がときどきあり、不安を抱えた中で生活していること、実弟は知的障害者(精神薄弱)で、あじさい園という施設に通園しており、収入はないこと、債権者は母から毎月五万円程度の援助を受けているが、家族六人の生活費は主として債権者が債務者から得る賃金で支えており、経済的、精神的にも一家の中心的存在であること、以上の事実が一応認められる。 右事実によれば、債権者は家庭の事情で、単身赴任をともなう配転命令には応じることができない状況にあったものと認められる。 他方、本件配転を命じる業務上の必要性についてみるに、証人Aの審尋の結果及び疎乙一、二、四、一二ないし一四によれば、従来、阪和支店の管轄下にあった高野口店が平成八年五月末日限りで同支店に統合されたこと、同支店は高野口店の従業員をすべて引き取ってシェアを確保する予定であったところ、七名中管理職一名以外の六名が全員退職したため、その補充に難航し、地元で確保することができず、関西主幹に後任の集配運転士の補充を要請したことが一応認められ、右事実によれば、債務者においては阪和支店に運転士を必要とする事情があったことまでは認められる。しかし、その後任として債権者が最適任者であったかどうかについては、大津店に運転士を出せる人的余裕があったかどうかよく分からないし、大津店の従業員の殆どがブロック社員であること〔中略〕に照らすと、債権者が果たして阪和支店の補充運転士として最適任者であったかどうか強い疑問が残るというべく、堅田方面と高野口方面との地域環境、人口分布の類似性、債権者の経験と実績等により債権者が補充運転士として最適任とする前掲疎乙号証及び証人Aの審尋の結果は直ちに措信することができず、他に、債務者主張の根拠事実を裏付ける的確な資料はない。 以上の事情に加え、債権者がこれまで一四年間真面目に働き、懲戒処分を受けたことはないことを考え合わせると、本件配転命令は権利の濫用として許されないものというべく、したがって、その命令違反を理由とする本件懲戒解雇は無効というべきである。 |