ID番号 | : | 07013 |
事件名 | : | 賃金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 国武事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 海外におけるゴルフ場開設のプロジェクト事業のため、別会社が設立され、労働者が同会社に移ったときの法的性質につき、移籍の通告と承諾書が存在するとして、転籍に当たるとされた事例。 プロジェクト事業のために設立された会社と移籍前に所属していた会社との間には、資金的にも人的にも密接な関係が認められるものの、両会社が実質上同一の法人格であるとはいえないとして、移籍前の会社に対する賃金請求が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 民法414条 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 使用者 / 法人格否認の法理と親子会社 配転・出向・転籍・派遣 / 転籍 |
裁判年月日 | : | 1997年7月14日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成7年 (ワ) 20809 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報1664号7頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣-転籍〕 原告らは、従来被告の一部局で進めていた本件プロジェクトの事業を平成五年四月に分離独立させてA会社に移すに伴い、A会社への移籍を承諾したものであるが、その経緯に加え、その後給与の支給をはじめA会社の従業員、更には取締役として、被告とは直接関係なく処遇されているのであり、その後の被告とA会社との関係に鑑みても、原告らが被告に在籍したままA会社に出向した、いわゆる在籍出向とみることは困難である。 もっとも、先に認定した移籍についての通告とこれに対する原告らの承諾書の提出以外に、原告らが自ら関与して被告を退職する手続をとったことを窺わせる証拠はないけれども、右承諾書の提出をもって、被告における身分を失う、いわゆる転籍出向の同意と解するに十分であり、別に退職手続を経ていないからといって、直ちに被告に在籍したままの出向であると結論づけられるものではない。また、A会社に移籍後も平成五年一〇月までの間、社会保険、雇用保険等の取扱いの上で、引き続き被告の従業員として継続加入の扱いがなされた点も、A会社東京事務所の開設手続が遅れたため便宜上とられた措置というべきであって、これによって事の本質が変わるわけのものではない。 その他、原告らのA会社への移籍後も被告との雇用契約関係が継続していると認めるに足りる証拠はないから、原告らの同主張は採用しがたい。 〔労基法の基本原則-使用者-法人格否認の法理と親子会社〕 〔配転・出向・転籍・派遣-転籍〕 二 実質上の使用者の主張について A会社の設立の経緯やその後の被告との関係は前記のとおりであり、資金的にも人的にも両者間に密接な関係があったことは否定すべくもなく、先に認定したとおり、原告らA会社に移籍した従業員の社会保険、雇用保険等の取扱いの上において当初半年余り便宜的な扱いがなされたり、(書証略)によれば、A会社が分離独立したはずの平成五年四月一日以降も少なくとも同月下旬ころまでは、本件プロジェクトに関する事項について、従前同様被告内の稟議にかけられその決済を経ていたことが窺われ、その移行の当初においては多分に混乱が見られなくはない。しかし、これらの事情があるからといって、原告らのA会社への移籍後、原告らが被告の指揮命令に服して業務に従事していたと認めることはできないし、A会社と被告が実質上同一の法人格であるとみなすこともできない。 そうすると、被告は原告らの実質上の使用者であるという原告らの主張もまた採用することができない。 |