ID番号 | : | 07014 |
事件名 | : | 解雇無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 豊田通商事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 勤務中に上司に殴りかかって怪我をさせたり、湯呑み茶わんを投げつけ窓ガラスをこわしたり、精神の異常を疑わせるような行動をとるようになった従業員に対して、会社が自宅謹慎の業務命令を出したところ、出社して便所に居続けるなどの行為をしたため解雇したことにつき、右従業員が解雇の効力を争った事例(請求棄却)。 |
参照法条 | : | 民法627条1項 労働基準法2章 労働基準法20条1項 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 病気 |
裁判年月日 | : | 1997年7月16日 |
裁判所名 | : | 名古屋地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成4年 (ワ) 1664 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | タイムズ960号145頁/労働判例737号70頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-病気〕 (一) 原告は、本件行為は原告の精神疾患によって惹起された可能性があり、病気の症状の一つと考えられるべきものであるので、それらは、およそ懲戒処分の対象にはなり得ず、就業規則五九条各号に該当しない旨主張する。 なるほど、原告の通院歴、入院歴、及び病院での診断結果(本件経緯2、5、6)等によれば、本件行為が原告の精神疾患によって惹起された可能性のあることは、原告主張のとおりである。 しかし、精神疾患によって惹起された可能性がある行為であっても、事理弁識能力を有する者によるものである以上、懲戒処分について定めた就業規則の規定の適用を受けるというべきであるところ、原告の本件行為が幻覚、幻想等に影響されて引き起こされたことを窺わせる証拠はなく、原告に対する病院での診断結果も、本件経緯5(二)、6(三)のとおり、主に人格障害というもので、事理弁識能力の欠如が疑われるほどに重い精神疾患ではないと考えられることなどからすれば、原告には事理弁識能力があったと認められるから、本件行為について精神疾患によって惹起された可能性をもって直ちに就業規則五九条の適用を否定することはできない。〔中略〕 本件解雇は、懲戒解雇事由に該当することを理由として普通解雇をしたものではなく、普通解雇事由について規定した就業規則一六条一号に該当することを理由として普通解雇をしたものであるから、原告の主張のような手続的瑕疵はない。〔中略〕 原告は、昭和五九年七月ころから平成二年六月ころまでの約六年間にわたって、就業規則五九条三号、五号、六号、九号に該当する行為を繰り返し行ってきていること(前記第三の一)、被告は、昭和六二年三月一九日から同年九月五日までの原告のナイトホスピタルに協力するなど、原告の治療に協力的な態度をとっていること(本件経緯6)、被告は、平成元年六月二〇日、同年九月七日、同月一八日に、原告の親族に対して、専門医の治療を受けるように原告を説得してほしいと依頼しており、原告が治療を受けられるようにするため、被告として適切な行動をとっていること(同経緯11。なお、甲一四号証の一一頁には、「職場において分裂病が疑われる者がいる時、原則として、家族ないし保護者に連絡し、職場での異常行動などについて、精神衛生的立場から充分に説明し、家族ないし保護者の者が責任をもって病者を専門医に受診させるようにすることが、最も適切な処置であると思う。」との記載があり、治療を受けさせるために親族に依頼することは適切な行動であると認められる。)からすれば、被告は原告が治療を受けた上で正常な勤務をすることができるように協力してきたものであるということができる。 (六) 以上によれば、本件解雇が解雇権の濫用であるとはいえない。 |