全 情 報

ID番号 07020
事件名 地位保全等仮処分申立事件
いわゆる事件名 済生会病院事件
争点
事案概要  七〇歳定年制の就業規則が適用されるA事業所と六〇歳定年制の就業規則が適用されるB事業所の両方に兼務していた従業員が、満六〇歳になった時点で退職扱いとされ、B事業所の就業規則の不適用を主張して地位保全及び賃金の仮払いを求めて争った事例(請求認容)。
参照法条 労働基準法89条1項3号
体系項目 退職 / 定年・再雇用
裁判年月日 1997年9月4日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 平成9年 (ヨ) 21056 
裁判結果 一部認容、一部却下
出典 時報1628号137頁/タイムズ965号164頁/労働判例737号64頁
審級関係
評釈論文 川田琢之・ジュリスト1149号134~136頁1999年2月1日/谷口安史・平成10年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊1005〕340~341頁1999年9月
判決理由 〔退職-定年・再雇用〕
 労働者が使用者と労働契約を締結し、七〇歳定年制の就業規則が適用されるA事業場と六〇歳定年制の就業規則が適用されるB事業場に兼務して就労する場合において、当該労働者が六〇歳に達したとしても、労働契約や就業規則等に七〇歳定年制を適用しない旨の定めがあるなどの特段の事情のない限り、当該労働契約が当然に終了したり、あるいはA事業場の関係でのみ労働契約が存続するものではなく、当該労働者が七〇歳に達した時にはじめて当該労働契約が定年によって終了すると解するのが相当である。なぜなら、定年制は、労働者が一定の年齢に達したときに自動的に労働契約が終了するものであるから、定年年齢を異にするA、B事業場に兼務して就労する労働者に対してB事業場の定年制を適用することは、A事業場に就労する兼務発令を受けていない労働者と比較して著しい不利益を被らせることになって相当でなく、また、労働契約は、労務提供に対する対価が特定の労務提供毎に明確に分けて定められている場合を除き、その性質上不可分であるから、六〇歳定年制によってB事業場の関係では労働契約が終了し、A事業場の関係では労働契約が存続すると解することは、労働契約の不可分性に反することになるからである。