ID番号 | : | 07022 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 三菱重工広島造船所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 会社が組合(分会)に対して賃金差別等の違法な取扱いをしたとして、分会が不当労働行為救済申立てを行い、中労委において和解が成立したが、その後も会社の賃金差別が継続していたとして、労働者が退職後に差額賃金及び不法行為による損害賠償を請求した事例(請求棄却)。 |
参照法条 | : | 労働基準法3章 民法709条 労働組合法7条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償 |
裁判年月日 | : | 1997年9月11日 |
裁判所名 | : | 広島地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成5年 (ワ) 1387 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例730号70頁/労経速報1663号3頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕 原告は、被告会社は、原告が分会組合員であることを実質的理由として、(1)原告がA会へ休職派遣(出向)になった際、原告一人を三方をついたてで囲んだ高い囲いの中で壁に向かって仕事をさせ、原告をみせしめ的に隔離し、また、ついたてを撤去した後も、原告だけ一人切り離して作業させたこと、(2)「A会運営に関する取扱要領」に基づき、原告が休職派遣(出向)した際にA会(親睦会)に加入させるべきところを、約半年間加入させず、また、原告の職場には、これとは別に「B親睦会」も存在していたのに、分会が気付いて抗議するまで三年間これを原告に隠し続け、「村八分」ならぬ「職場八分」の差別をしたこと、(3)原告の父親が死亡しても、就業規則のうちの社員慶弔規則に定めている花輪も贈られなかったこと、(4)その他、職場八分による種々の人権侵害(例えば、原告に対し、休職派遣(出向)時及び定年退職時に職場において挨拶する機会を与えなかったこと)が行われ、職場での自由な人間関係を形成する自由が侵害された旨主張する。〔中略〕 原告の仕事場のレイアウトについて、被告会社ないしA会が講じた措置には、それが最も適切妥当な措置であったかどうかはさて措き、少なくともそれなりの合理的理由が認められないわけではないから、原告が主張するように、被告会社が、原告が分会組合員であることを実質的理由として差別的取扱をする意思のもとに、殊更、原告の仕事場をついたてで隔離したり、原告を職場で孤立させた状態で仕事をさせたとまで認めることはできない。 したがって、原告が仕事場の隔離ないし孤立化により違法な差別的取扱を受けた旨の原告の主張は理由がない。〔中略〕 原告は、職場の親睦会であるA会やB親睦会から完全に遮断、排除されていたわけではなく、実質的にはこれらの会に入会し、各種行事に積極的に参加していたことが認められるのであるから、原告の入会時期が、規則又は慣例上の制約から(A会)、或いはなんらかの手違いにより(B親睦会)若干遅れることがあったとしても、そのことを捉えて、被告会社が原告を排除して職場で孤立化させたものと評することはできない(なお、原告本人の供述によれば、原告がA会に加入する前の休職派遣(出向)直後(四月)に、同会の行事である誕生会に参加していることが認められる。)。〔中略〕 花輪が贈られなかったことについては、原告本人の右供述があるのみで、他にこれを確定する証拠はないばかりか、仮に花輪が贈られなかったとしても、被告会社所在地の広島市から遠隔地で葬儀が行われた場合は、本人が自分で花輪を手配し、後日被告会社にその費用を請求するという運用がなされていたことが弁論の全趣旨により認められる本件においては、原告本人の右供述をもって、原告が違法な差別を受けたと速断することはできない。〔中略〕 原告の上司であるC課長は、前示認定の事情から原告の紹介を休職派遣(出向)当日の始業時に行えず、原告からの申出もなかったことから、原告を職場の者に紹介することを失念したというのであるから、何らかの意図のもとに殊更に原告の紹介をせず放置していたわけではないこと、また、C課長は、原告に時刻(終業時刻である一七時一五分)を指示して原告が退職時に職場の者に退職の挨拶をする機会を設定し、当該職場の全員(三十人)が花束と餞別を用意して原告の来るのを待っていたというのであるから、原告が退職の挨拶をしなかったのは自己の意思によるものというほかはなく、これを他に転嫁して、上司(C課長)を非難するのは当たらない。 以上に認定・説示のとおり、原告の前掲各主張は、いずれも不法行為を構成するものとはいえないから、原告の不法行為に基づく慰謝料請求は、さらにその余の点(消滅時効、権利濫用)について判断を進めるまでもなく、理由がない。 |