ID番号 | : | 07024 |
事件名 | : | 退職金等請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 国鉄清算事業団(大阪工事局)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 旧国鉄に臨時職員として採用され、後に雇止めになった者による国家公務員等退職手当法に基づく退職金請求につき、その一部が認容された事例。 旧国鉄に臨時職員として採用され、後に雇止になった者による、正規職員にされなかったことが不法行為に当たると主張したケースにつき、これが棄却された事例。 |
参照法条 | : | 国家公務員退職手当法2条2項 国家公務員退職手当法3条2項 民法709条 民法710条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算 |
裁判年月日 | : | 1997年9月16日 |
裁判所名 | : | 大阪高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成7年 (ネ) 1414 |
裁判結果 | : | 原判決変更、一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 労働判例749号9頁 |
審級関係 | : | 上告審/07148/最高二小/平10. 6.22/平成9年(オ)2407号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-退職金-退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕 法三条一項は、四条(長期勤続後の退職等)、五条(整理退職等)の場合を除いた、普通退職の場合の退職手当の算出方法を規定する原則規定であって、勤続期間が一年以上二四年以下の場合に適用されるものであり、法三条二項は、いわゆる自己都合退職の場合の減額された支給率を規定する例外的規定であると解される。控訴人の勤続期間は一〇年未満であり、雇用期間満了雇止めにより退職したものであるので、同条一項を適用して算定すべきである。 (四) 以上によれば、控訴人の退職手当の額は、七〇万四八〇〇円を超えないものと認められる(六二六〇〇×一〇〇分の一〇〇×二+九六六〇〇×一〇〇分の一〇〇×六=七〇四八〇〇)。〔中略〕 法三条一項は、四条(長期勤続後の退職等)、五条(整理退職等)の場合を除いた、普通退職の場合の退職手当の算出方法を規定する原則規定であって、勤続期間が一年以上二四年以下の場合に適用されるものであり、法三条二項は、いわゆる自己都合退職の場合の減額された支給率を規定する例外的規定であると解されることは、3(三)判示のとおりである。法三条一項が勤続期間一一年以上の場合についてのみ適用されるものであるとすると、退職理由は種々存するのに、同条二項は「その者の都合により」退職した場合についてのみ規定しているにとどまるから、勤続期間一〇年以下のその余の理由による普通退職の場合については、その額を定めるための割合に関する規定を欠くという不合理を生じることになる。基準規程一〇条一、二項は、法三条一、二項と同趣旨の規定であるけれども、これを別異に解すべき理由はなく、また基準規程の右条項の適用につき、普通退職をした者についても、勤続年数一〇年以下の者については同条二項を、一一年以上の者については同条一項を適用するような慣行が国鉄において確立していたものと認めるに足りる証拠はない。また、法の関係規定をみれば、退職手当の額は、勤続期間又は退職理由を基準として功績・功労の度合を評価する形で、算定方法が定められているが、退職理由についていえば、基準規程(〈証拠略〉)における勧奨退職(一一条)や整理退職(一二条)の場合と本人の都合による退職(一〇条二項)の場合との取扱にも端的に現れているように、官側の利益につながるものについては手厚く、不利益につながるものについてはその逆に、取り扱われている。控訴人は、雇用期間満了雇止めによって退職した者であり、自己都合によって退職した者ではないから、基準規程一〇条二項の自己都合による退職として不利に取り扱われるべきいわれはない。この点に関する被控訴人の主張は採用することができない。 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕 以上の認定事実によれば、国鉄における臨時雇用員の更新による雇用契約の繰返しや控訴人の行ってきた業務の内容は、国鉄当局が臨時雇用員の更新による合計の雇用契約期間やその業務内容として右(証拠略)で予定しているようなものとはかなり違ったものであるといえる。しかし、前記認定のように、大阪工事局は、控訴人との間で雇用期間を二箇月とする事務補助を行う臨時雇用員として雇用契約を締結し、右契約の内容に従って控訴人を処遇していたものであるところ、前記認定の昭和四一年協定締結前後の背景事情及びその後の関連諸事情の変遷の中で、国鉄当局としては、それなりに臨時雇用員の、待遇の改善、職員化への努力はしていたものであり、他方、控訴人としても、不満を持ち続け、その改善へ向けての組合活動に励んでいたものではあるが、それはそれとして、その自由な意思に基づいて、右締結した臨時雇用員としての契約の下で雇止めに至るまで勤務を続けてきたものであることを思えば、大阪工事局の右雇用契約の締結行為やその契約内容及びそれに基づく待遇が、雇止めの効力が確定した後において、控訴人が、その主張の点を理由として被控訴人に対し、不法行為による損害賠償を求めることができる程の違法性のあるものであったと認めることもできないところである。また、そうである以上、控訴人としては、右取扱が、法の下の平等(憲法一四条)、男女の同一賃金の原則(労基法四条)、同一労働同一賃金に関する条約(ILO一〇〇号条約)に反し、違法であることを理由として被控訴人に不法行為による損害賠償を求めるに由ないものというほかはない。 |