ID番号 | : | 07029 |
事件名 | : | 地位保全金員支払仮処分申立事件 |
いわゆる事件名 | : | 大崎組運輸事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 団体交渉の場における組合役員による専務への暴行を理由とする解雇につき、解雇という最も重い処分に相当するほどの行為であったとはいえないとして、右解雇が無効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法89条1項3号 労働組合法7条1号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 暴力・暴行・暴言 解雇(民事) / 解雇事由 / 違法争議行為・組合活動 |
裁判年月日 | : | 1997年10月8日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 平成9年 (ヨ) 2107 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 労経速報1685号3頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-暴力・暴行・暴言〕 〔解雇-解雇事由-違法争議行為・組合活動〕 一 解雇の相当性について 1 本件解雇は、債権者が、A専務に暴行を加え傷害を負わせたことを理由とするところ、債権者が加えた暴行の程度・態様については争いがあり、確かに、疎明(書証略)によると、A専務に対しては頚部捻挫傷、腹部挫傷で約二週間の加療を要す見込との医師の診断がなされていて、A専務は、暴行を加えられた翌日から一二日間仕事を休んだこと、債権者がA専務の襟や袖を掴んだことで同人の作業服のボタンが一つちぎれて飛び散ったこと、本件暴行に至る前、両者間には言葉のやりとりなどで若干険悪な雰囲気が生じており、債権者は、自分の座っていた机を倒し、ドアを蹴って「表へ出ろ」などと言いながらA専務に接近し本件暴行に至ったことなどが一応認められ、これらに照らすと、債権者の振るった暴行は、債権者が主張するような、単に「衣服の襟に手を掛け」た程度ではないと考えられる。 しかし、(書証略)(医師の回答書)によるも、A専務の身体に客観的に分かる外傷などはなく、痛みなどは全て自己申告によるものと一応認められること、その場にいた組合員らは、揃って債権者がA専務の前の机を倒したこと及びその机に同人の身体を打ち付けたことを否定していること(書証略)などに照らすと、債権者がA専務を机に打ち付け、一二日間も仕事ができない状態に陥らせたとするには疑問が残り、結局、債権者は、座っていたA専務に対し、両手で同人の作業服の襟や袖を掴んで強く引きずり上げたものと一応認めることができる。 2 そこで、右を前提に、債権者の行為が解雇に相当するものと言えるかを検討するに、本件解雇は、債務者の就業規則(書証略)八条一号「第四〇条に定める懲戒解雇の基準に該当したとき」(四〇条一一号「刑事上の罪に問われた者で懲戒解雇するのを適当と認めたとき」)に基づき行われたものと一応認められるところ、債権者の行った暴行は、組合交渉の中で、A専務の使用車両を「売れ」「リースだから売れない」などの話などで双方気持がいらだっていたことなどがあって発生したものであること、従前から債務者側と組合側ではお互いをこころよく思っておらず、種々の嫌がらせ行為もあったこと、債権者自身、自分のトレーラーヘッド内に何者かによりいたずらをされていて、債権者はそれが債務者側の行為によるものではないかと内心思っていたと窺われること、現に相手の身体に手を掛けるか否かはかなりの違いがあるが、債権者の従事する職種にはある程度気性の荒い者が少なからずいると考えられることなどに照らすと、債権者の暴行が、解雇という最も重い処分に相当するほどの行為であったと一応認めるには足りないと言うべきである。よって、本件解雇は無効であると一応認めることができる。 二 保全の必要性について 債権者の生活状況については前記第三の二2のとおりであるところ、その一ヶ月間の平均支出額は約三八万六〇〇〇円であり(書証略)、また、債権者には、今後他から収入を得ることができる可能性があることなどに照らし、保全の必要性は、毎月右金額を概ね九ケ月間支払を受ける限度で一応認めることができる。 |